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category :スケッチ

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色のなくなる日

珊瑚の死に絶えるほどに
海が海でなくなれば
水色という色はなくなっちゃう

空気がよごれ
空が宇宙をうつさなくなれば
空色という色はなくなっちゃう

世界から水色がなくなっちゃう
水道水の色にかわっちゃう

死んだらひとしく閉じるまぶた
生きてる間に なにを見るか
死んだらまっくろ
だから今日みあげるこの青空
すみきった
とびきりのこの水色





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逃げきれぬ

このごろは
詩もよまず
書きもせず
とくに思いもせず
暮らしていた
それでも
詩は
ぼくの人生に
ぴったりとよりそい
まとわりつき
ふりはらうことができない
だいぶ
好かれているのだな と
こそばゆい心持のなかでおもう

詩はぼくの影なんだろう
どこへ行ってもついてくる
では
光はなんだろうか

鬱の
絶望的なくらやみのなかで
わずかな光がうみだす
もろい影の頼りなさや
はかなさや
うつくしさ
その光の正体とは
いったいなんであろうか


そんなこともわからぬまま
今日もぼくは
ぼくの影法師をめでる





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百年後

1945
何があったか
誰もがもう忘れている


百年後
とはいわず 一年後
安保デモがあったことなど
すっかり忘れ去られている
百年後
当事者たちは
ひとしく
みな永眠し
かの論争の名残をのこす
なにものもない
百年後
人間が汚辱にまみれながら
なお生き残っているならば
また新たな闘いにあけくれながら
一方でまた
そのふたつの掌をあわせて祈り
そのこぶしをふりあげて叫び
平和を希求しているのだらう
百年後
人間が
その闘いの記憶が
生き残っているならば






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手紙

拝啓、国家さま

秋です
秋には大量の葉が
まちかどのいたるところで舞うでせう

あきらめるという
静かなたたかいを
舞う葉のいちまい、いちまいが教えてくれています

樹木はひっそりと
その身につけた葉をおとしていきます
弱い葉をつけたままでは
厳しい冬を
こえることができないからです

人は
そこに
あきらめるという所作を
学ぶことができます
あきらめて、なお
進むという生き方を学ぶのです


ただし
国家はそうあってはなりません
もしそうしなければ
国家が冬をこせないのであれば
どうぞわたしから殺してください
しずかに
闇にほうむるように
精神を病んだ、詩人かぶれ
社会的価値など
これっぽっちもないおとこです
ひとふりでパサリと落とせませう

さあ



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ひとり

社会のお役にたてなくてごめんなさい
それでもわたし、生きているんです。




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休日

書斎に長くいると
外に飛びだしたくなる

風を
鳥の声を
陽のひかりを
雲のあつみを
花々のかおりを
一身に感じる
ある日は
好きな音楽を聴きながら
踊るようにあるく

疲れてベンチにすわると
せき止められた言葉が
氾濫しそうになる
そうすると
今度は
書斎にはいりたくなる

休日の午後
自分はなんて自由なのかと
ひとりでわらう





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見ている

その美しい尾をふりまわし
仲間と戯れているのか
尾長

庭園のなかの
人工の滝の
とどこおらず
たまらず
流れていく水をおいかけて
仲間と大きな声で
鳴きかわすのか
尾長

池をはさんだ
さびしいベンチに
曲がった腰を
ちょこんとのせて
一心に
カメラの液晶をのぞきこむ
老人

一瞬できえさる
尾長のダンスホールを
切りとるように
シャッターをおした
老人

そのうしろ
道をはさんだ
ベンチで
それを見ている男
これがわたし

尾長も
老人も
わたしのいる場所からは見えている

それを見ている
わたしを見ている
この視線はなんだろう
わたしにわたしが
くっきりと
はっきりと
見えている





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アレルギー

妻は
人間アレルギー
異次元に住みながら
顔だけを 人間世界につきだしている

扉のすきまから
夜が
侵入してくるのにも似ている
のそり のそりと
顔をのぞかせている

そうしてけなげに
人の声を聞き
こたえをかえしているものだから
ときおり無理が生じて
レストランや電車や
人混みのなかで
額にナイフを突き立てられるような
感覚におちいって困惑している

それは
「なんとかシンドローム」ではない
本人ですら
その違和感を言いあらわせないのだから
妙な医者がでてきて
あるかなきかの病名をこねくりだすまえに
ぼくはそれを
人間アレルギーと名づけたのだ

それは
花粉症やなんかと似ていて
その日 その日
許容量がどうやらきまっていて
それを超えると
からだの違和として影響するのだと ぼくは思う

だから彼女は
異世界に住んでるのだと思う

顔だけがこの世に間借りしている
純粋なその眼だけが
ゆらり
ふらり
宙に浮いている




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夏のお葬式

夏はわたしに
たくさんのものをくれました

わたしは夏のなかで
いつまでも くるくると 踊りました

はげしい暑さと
はげしい雨と
はげしいやさしさに つつまれて
わたしは夏の子となりました

いま
夏はどうやら死にました
家の猫は そろそろ毛を長くたくわえはじめ
妻は風邪をひきました

いま
秋のひそひそ声を聞きました
すぐそこまで来ているのがわかります
わたしはさみしくなりました


こごえる手を
胸の前でしずかにあわせ
逝ってしまった夏に 祈りました





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秋はきらいです

書斎の机の横に
父の遺影がある
遺影は あたりまえだが 動かない
けれど毎日その表情はちがってみえる

心に やましい隠しごとがないとき
心に 醜いわだかまりのないとき
良い仕事をして帰ったとき
父よ
あなたはあんなにはっきりと ほほえんで
ぼくを迎えてくれる

今日のように
わけもなくふさぎがちな夜などは
ぼくはこわくて遺影を見ることができない
怒っていはしまいか
悲しんでいはしまいか

なんの理由もないのに
気分がふさぎがちなのは
やはり 病気のせいなのだろう
やはり 今年もくるのだろうか

あの無慈悲な荒波が
また
また やってくるというのか

苦心惨憺
虚飾ではなく
ほんものの
血と
汗と
涙で
築きあげた
この 生活を
また ぶち壊しにくるのか

逃げたい
いや、逃げない
いや、逃げることなどできない

秋はきらいです
父よ





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無題

あっちも正しい
そっちも正しい
みんな正しい

正しいって なんだろか
みんなが 血眼になって さがしては
手に入れたら 二度とはなすものかと
歯をくいしばったり
腕をふりまわしたり
がちゃがちゃ わめきたてたり

ふーん

そんなにいいものなのかしら
そんなに価値があるのかしら

「わたしは正しい」と 口に出した瞬間に
ほら
自分で敵をつくっているよ
ほら
自分で迷子になっているよ





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言外

詩をかきこむために
どこへでも
持ち歩いている手帳に
まっしろな一頁がある
それを見つけて
ひとりよろこぶ

「これもひとつの詩だらう」



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隣人

おおくの人がおそれている
知らないから
わからないから
精神病院ときくだけで
こわがる
さげすむ
それは
自分とは関係のない世界のように
忌みきらう
それは知らないから
それはわからないから

わたしは
病院にいるとおちつくのだ
ロビーに 受付に 廊下に
これだけおおくの人がいて
わたしと似たような病をもち
わたしと似たような闘いのなかにあることに

採血や、エックス線の室を通りすぎながら
「二階 作業療法室」の看板をみながら
入院患者のちどりあしを見守りながら
かつてここにいて
くるしみにのたうちまわった自分を思い出しながら
わたしは 長い旅をおえて帰宅したわが家にいるかのような
深い、静かな息をはくのだ

やがてまたここに入るときがくるかもしれない
けれど
決してそれは不安ではなく
不満にも思わない

ただ、快い
この気持ちをなんとしょう

同病相憐れむ
傷をなめあう獣たちのように
わたしはこうしてあなたたちの傷をなめよう
舌がヒリヒリ 麻痺したとしても
生ある限り、なめつづけよう
おなじ病の隣人たちよ




電車にのって席にすわったとき
喫茶店で珈琲をたのしんでいるとき
わたしはあなたたちのそばにある
健常者のみなさん
わたしは精神障碍者である
わたしはあなたたちの隣人である
たんすにも金庫にもおしこむことのできない
狂気、狂人は
今日もあなたのすぐそばにあり
意欲している
呼吸をしている
わたしはただ苦しむ
わたしはただ必死で生きる
それは
あなたたちと 何もちがわない
わたしはあなたたちの隣人である。





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人間反対

戦争というのは
ひとつの結晶にすぎない

老人をいじめる人のこころの
幼児を殺す人のこころの
自分だけが助かればいいというこころの
自分だけが繁栄したいというこころの
自分とは違うものを憎むこころの
自分のいいなりに従わせたいこころの
自分の子供だけがかわいいというこころの
自分の利益をまもるために他者を排斥するこころの

教室でおこる暴力を「いじめ」という
世界で起こる暴力を「戦争」という
どちらも暴力で
そこに大小の区別はない
すべて暴力は
脆弱な人間のこころのくすんだひだの奥から
こぼれてくる
かなしい
とか
さみしい
とか
くやしい
とか
死んぢゃえ
とか
そういうこころの結晶なのだと思う


だから言う
戦争反対ではなく
人間反対と




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疑問

詩が言葉を呼ぶのかしら
言葉が詩を呼ぶのかしら



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50年
咲く


それは
繊維であまれた
造花ではない

一日を
懸命にあみこみ
つむぎ
咲かせる
いのちの花

やがて枯れる
そのうえで
何度でも言う
何度でも言う

花は
今にしか
咲かない

明日には咲かない
昨日にも咲かない

今を
懸命に
生きる
人の
胸に
花は
咲く






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煙草

煙草を買い忘れてしまった
いまから買いにいくのも面倒だ
そんなときぼくは
二階にあるぼくの机の引き出しをまさぐって
普段とはちがう銘柄の煙草をとってくる
これは父ののこした煙草だ
これが最後の一箱だ
父が吸うために買っておいた 最後のひとつだ
ずいぶん前に買ったのだ

来月は
父の三回忌
父が吸うはずだった煙草を吸いながら
父の息子だった時代のことを
なんとなく思い返している

あの人が生きたために
ぼくが生まれた
姉が生まれ
妹が生まれた
そして姉は男児と女児を生んだ
めくるめく
生の連鎖に
みぶるい ひとつ

父の最後の一言を
聞き取ることができなかった息子は
あのときの父の苦しみにゆがんだ顔を
まだ
まだ
鮮明に思い出しては
そのたびに うっ と胸をつまらせている
それは煙草のせいではあるまい






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土曜日

土曜日なので
植木屋は
六日間の疲れをいやすために
週に一本と決めたビールを飲んだ

うつくしい琥珀色をまずながめた
それからビールに軽くおじぎを
そして六日間頑張った自分を
走馬灯のごとく おもいかえしながら
一気に飲んだ

ごく
ごく
ごくり

六日間
忍耐に結んだくちびるが
腕力に噛みしめた奥歯が
はあっと開き
ビールの香りとふかい息を
肺の底の底から そとへかきだした

それから
しばらくぼうっとする

やがて
すっかり眠りにつくまで
植木屋は来週の土曜日のことを
思ったり
思わなかったりするのだった






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しろくろ

よく言われるように
是か非か

人に問われれば
わたしは沈黙するでしょう
是と非のあいだに
白と黒のあいだに
0と1のあいだに
右と左のあいだに
無限の世界があるからです

そのすきまのポケットのような世界に
わたしは生きてきたのだし
そうして生きてゆくのだし
そのまま死んでゆくのだし






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そのわけ

そのわけは
とても簡単です

ほめられたいのぢゃない
おどろかせたいのぢゃない
みとめられたいのぢゃない
もうけたいのぢゃない
うらやましがられたいのぢゃない
だれかのためぢゃない

そのわけは
ぼくが
ぼくであることを
あかしするためであり

そのわけは
ぼくがそうしたいからなのです

そういうわけで
ぼくは
詩をかいているのです





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みっつの顔

ぼくの昼は
この二本の腕と
二本の脚とで
すこしでも良い仕事をし
すこしでも多くのお金を稼ぐこと
そればかりを
考えて
行っているのです

ぼくの夜は
妻との語らいや
家族との夕食
ねこと遊んだり
疲れをいやしたり
明日に備えて準備をしたり
訓練をしたり
一日のおわりを祝い
楽しむことばかりを
考えて
行っているのです

ぼくの
一人でいる時間には
たとえばそう
いまのように
一人きりでいるときには
詩のことばかりを
考えて
そしてこう
書いているのです

ぼくにはみっつの顔があるのです
そのどれもがぼくそのものであり
そのどれをもぼくは愛しているのです

昼の休憩時に
夜のふとした空白の時に
詩は
ぼくのこころに
そっとしずかに
やってくるのです
ぼくはいつでもその時を
たのしみに
待っているのです







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異国

溺れるほどだ
このひかりの量は
見上げれば 純度100パーセントの 青
遠い異国にたどりついたよう
夏はこれ ひとつの国だらう

この空の向こう
姉の乗った飛行機は
遠くハワイへ向かっている
ぼくはパスポートをもったことがない
ここにいて
空を見ている
めぐりつづけるこの季節と
言葉だけがパスポート






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秒活

忙しいだなんて言い訳はよして

忙殺?
秒殺?

そんなのぜんぶ 言い訳ぢゃない
この一秒を生かして
この一秒に生きて頂戴

毎秒 全力でたのしんで
それから死んでいって頂戴
じゃなきゃママも
あんたを産んだ甲斐がないもの





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今度はこない

めんどくさいことや
いやなことに
しかめつら
つばはいて
毒づいて
さえない気分になっているうちに
一日が終わってしまうなら
一度しかない人生が
そんなふうに
あっけなく終わってしまう

ある日
ある時
不意に
強引に
有無を言わさず
ぼくらはみんな 死んでしまうというのに
それがわかっているのに どうしてこのうえ
今を生きることができないというのか

昨日も
今日も
あらゆる生き物たちが
その身をもって
死を教えてくれているぢゃないか


今度うまれたら
だなんて
そんな莫迦をいうのは
もうよしませう

自分を満たすものひとつ
たったひとつ探しませう
そして
それだけのために生きませう

そら
もう笑顔






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蟷螂

かまきりと遊んだ

日陰でやすんで
あせを涼風にかわかしていると
ひとつのかまきりがやってきた
ちこちこ
ぼくのあぐらの膝のほうへ

その姿が
あまりにかわいらしいので
たまらなくなって
ちょこんと その小さな頭を
小指のさきでつついてみた

かまきりは
半歩だけ退いて
その斧のような両手を
雄々しく広げた
執拗にくりだす
ぼくの小指のジャブの連打を
美しいほどすばやく
合理的な 最小の動きでかわしつづけた

たまに指先が頭にあたろうものなら
猛りくるって
そのふたつの斧を頭上にふりまわす
ははは
と笑いながら
ぼくはいつまでもかまきりと遊んでいた


暑い午後
煙草をふかしながら
かまきりと遊んだ
そのちいさな命の
退かない生き方に
その不退転のファイティングポーズに
ぼくは心底
感動し
敬服していたのですよ

また遊んでください






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あしもとで
くるったように
蝉がないていた

かたほうの
はねが
こわれている
むらがる
ありたちに
ていこうするにも
さけぶ いがいの すべが ないとみえる

いきながらに
くわれ
たすけをもとめているのだろうか

ひとであるわたしに
そのさけびは わかりようもないのだけれど
そのさけびに
わたしはせんりつを おぼえた

それは
いっこのせいめいの
破裂する
さいごの
ばくはつおん
だったろうか






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陽炎


環七は烈火の海
陽炎の海
排ガスにうもれた都市
それらをすりぬけて 精神病院
ゆらり ゆらり 陽炎のむこうに
ぼんやり立っている自分を幻視する
ぐにゃにぐにゃに曲がって蒸れて
それはうつに沈んだ姿に似ている

いまのぼくは陽炎のこっちにいる
いまのぼくはまるでこの青い空のように
広く
際限なく
すみきっている







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盗んだ

地球の背骨をひっこぬいてしまった
なんてことだ
もう自立もできないかもしれない

ぼくは自分が背骨泥棒だと
露見するのがたまらなくおそろしく
盗んだそれをあわててベッドの下に
隠したのだけれど
夜ごと それのきしむ音が
ぼくの神経をすっかりとがらせ
摩耗させてしまったぢゃないか

背骨をうしないぶよぶよになってしまった
この地球はまるで
空気の半分もないゴムボールのようで
ぶよぶよ ぶかぶか
不安定で歩きづらい

誰かかわりの背骨をくれないかしら






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くもりぞら
うめつくすような
鵜の群れ
おおきな
おおきな
巨大な一羽となって
低くそらをうねって飛んでいた

ぐるり
まわり
うねり
めまい
うなり
なみたつ海

台風からにげてきた魚の群れ
集中攻撃
くろいそら

空がうめつくされてしまった
規則的にみえて無規則な
無規則にみえて規則的な
そのうねり
ぐうるぐると
そこに一個のおおきないきもの
集団の意思をあらわす

ぼくは呑みこまれていたんだ





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花火

もう少し話していたいから
もうずいぶん酔っているけど
ハイボール
もういっぱいだけ飲もうかな

駅前 ビルの四階
安いフランス料理の店
みおろす
窓の外は雨
歩道橋には傘
夜空には花火
ここから見える何十人もの人らが
待ちに待って 見上げる花火
ぼくの窓から花火は見えない

遅れてくるコースの料理に
文句いいながらもお酒と笑顔
妻の家族が全員そろって
ぼくの前で笑顔をはじく
ハイボールが炭酸はじく
何千発の花火より
見たいのはこの笑顔の花火

酒を飲んだら薬はのまない
病気のことも今夜は忘れて
いつもふとんに入る時間に
こうして酒をくみかわす一夜

まっくろに灼けた腕
妻のうなじをすべる汗の玉
花火の轟音
下町の歓声

駅前 あふれる学生 夜光虫
夜が良いのか こわいのか
人ごみ 喧噪 にぎやかな夜
音速 通過す 青春のかげ


夏がきたのだ






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風景にわたしがいない
わたしの目がみている
この風景に
わたしがいないなんて おかしい

陽にやけた
手の甲ばかりを見ている
黒く たくましく かたい
手の甲ばかりを見ている

てのひらは
しろく やわらかい
ぐっとにぎり
こぶしをつくる

わたしはてのひらの中にある

てのひらを見つめるとき
人生の足は
すこしのあいだ
立ち止まる
三十二年
使い古しの
このてのひらには
いいようのない
物語がある








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風呂

排水溝にながれていく
あの顔
あの声
こぽり こぽり
ながれていく

今日いちにちの
できごとのすべて
首をすこし後ろにむけるだけで
すぐに見えるほど
過去とよぶには近すぎる
それらの
あの顔
あの声を
ざばん ぱさん
ながしていく

風呂場のかがみをのぞきこんで
ひげを剃る
今日いちにちで
わずかずつのびた
このひげ
体についた泥やほこり
汗や
かなしみや
怒りや

すべて
排水溝にながれていく
あの顔も
あの声も
いやな言葉も
いやな出来事も

体のよごれと
心のけがれを
排水溝にながしていく

それをぢっと見ているわたし






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ぼくという詩

よいものをつくろうと
思いたち
書斎にすわりこんでは
元も子もない

机をにらんでみても
ほおづえついてみても

詩はつくるのではない

語るように生き
生きるように語るのみだ

ぼくという
ひとつの詩
その可能性を
一度
空にあずけてから のち
再び ぼく自身に
それを問うのだ






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わたしのかわいいお花たち
くちなし、かんな、アガパンサス

あさ
仕事へむかうわたしの目には
その姿をまったくとどめないのに
つかれて
よごれて
くたびれて
家に帰りゆくわたしの目に
なぜかいつも凛々しく映える

わたしのかわいいお花たち
あじさい、むくげ、きょうちくとう

ながい帰路
雨のときも
風のときも
今日のように
暑いときも
ほら
あのカーブをまがって
立葵の美しく
立ち並ぶ小道をぬければ
こころよい我が家はもうすぐそこだ
左右に並んだ色とりどりの
可憐な 気高い 葵たちが
一日の終わりをわたしにおしえる

ああ
彼女たちのように
夏の太陽をつかまんばかりに
手をのばし
ぐんぐん
どんどん
わたしも
伸びてゆくことができたなら

わたしのかわいいお花たち
くちなし、むくげ、ホリホック

梅雨のやつ
遅れてとびだし やってきた
バタ足で来て そしてあわただしく降りつづけ
そのまま去り
不意に
夏がはじまった 昨日
おまえたちの季節がはじまったのだ
わたしのかわいいお花たち

夏が来、そして
夏が帰れば
花は枯れて
その種子をはじく

その日まで
わたしはおまえたちを見守っているから
わたしを勇気づけ
慰めておくれ
わたしのかわいいお花たち

来年も ここで会いませう






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飯場者ブルーズ

わずかなデヅラでパンを買う
それは彼の毎朝の習慣
仕事が始まる二十分ほど前
会社のちかくの公園のベンチに腰かける

百円で買ってきたパンを
ちぎっては投げ
ちぎっては投げる
それはすずめを養うためだ

故郷の函館には
もう何年帰ってないだろう
飛行機など乗る金もなし
いちにち働いて食うだけで終わる

郷里は北国
死ねば帰るか
肉体労働の日雇いならば
動けなくなったら骨になる

すずめはチコチコ走り回るが
何倍もの大きな体のはとが
さっとパンをかすめてしまう
すずめは五羽 はとは二十羽

仕事が終われば
三日に一度は飲みにいく
十五年 通い続けている店に
体のどこかに泥をこっそりつけたまま

店のママのことなら家族よりくわしい
ママの妹は恋人だし
三歳だったママの娘は大学生になり
父の日になにがほしいかと尋ねてくる

ママの離婚の原因も
そのあいだの葛藤や苦悩も
かきまわす酒に こぼした涙も
彼はすべてを見守ってきた

死ねば本当に帰るだろうか
郷里に誰もいなくなれば
彼の骨はどこへゆくのだろうか
筋肉も体力もおとろえてゆくのに

動けなくなってしまえば
飯場から去るよりほかない
何も誰も保証などしてくれない
彼はその腕いっぽんで生きているのだ

昼になれば粗末なパンに缶コーヒー
すずめにやるパンをきりつめれば
もうすこしいいものも食べれるだろう
もうひとつ自分で食べれるだろうに

函館の夢を
見るだろうか
いまの彼をみている限り
函館よりも すずめのほうが郷里に近い







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抱擁

しろい
かよわい白鳥を
ぎゅっと抱きしめている
見えない涙が
そのちいさなあごから
したたる
なにを見ていただろう



階下から母親の声がする
時間がせまってきていたのだ
放課後の夕焼け空は いつの間にか
星がちらつきはじめる 紺色の空になっていた
不自由な おさない恋は
つねにせまりくる時間とのたたかいだった

「もう帰らなくては」
少年がそういうと
少女は腕にぐっと力をこめた
「お母さんに怒られてしまうよ」
少年の首筋にまかれた
ほそく しろいその腕は
一体
何を抱きしめていたのだろう

いつまでも離れられない
恋の磁力に
少年はほほを紅潮させた
少女がこうまで
自分を求め
自分を必要としていることに
かれは目に見えぬ王冠を戴いた気分さえ感じた

少年は明日もまたこうして
少女と時間を過ごすことを予想していた
そうしてそれが
いつまでも続くと
信じて疑うこともなかった
胸の中にともった灯が
どんな風のなかにあっても
消えずにともり続けるものだと思っていた


十数年のときをへて
灯は消え
燃えかすだけが のこされた
その残骸を見るたびに
かれは胸をチクリと痛める
そしてあの灯をおもいだすばかり

そうしてあるとき
はたと気づく
あのとき少女が抱いていたのは
ただ 少年の 細い首ばかりではなかったこと

少女は
時間そのものを抱きしめていた
時の不可逆を知っていた
恋の短命を知っていた
経験からではない
おそらくそれは女の遺伝子の知恵によるもの
男はほほえみ
かわいいやつだと頭をなでるが
女の全霊こめた抱擁には
まるで かなうはずもなかった

少女は時間ごと恋人を抱きしめ
かれの人生をまるごと包み込んでいた
その場の別れをおしんでいたのではなく
あまりにもはかない人生と恋と
そうして無慈悲に通り過ぎていく時間そのものを
少女たちはその場につなぎとめるように
抱きしめていたのだ

男たちには
それがわからない
だから
十数年をへてやっと
自分はあのときの少女に
いまだに抱きしめられていることを
知るのだった

日々モノクロに薄れていく
頼りなげな記憶の中で
少女たちの姿だけが
いつまでも極彩色に輝いている

少女の抱擁が
一生の一秒に
永遠のいのちを与えてしまったのだ







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交差点

交差点のむこうから
歩いてきたのがあなただったとして
わたしはそれに気づけたか
それともただすれちがったのか

ひとめでも
わたしはあなたを見たのだろうか
あなたはわたしを見たのだろうか
その瞳を かわした瞬間はあっただろうか

袖が触れあうことがあっただろうか
あるいは手をしっかと握ったろうか
その手をあなたは握り返したろうか
わたしは何かを話しただろうか

交錯は
交差点の一瞬
点滅する青信号に目を奪われた一瞬に
出会わずに別れていく

握られたはずの手を
話したはずの言葉を
見かわしたはずの視線を
わたしはどれだけもっているだろう







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傷あと

傷がほこらしいときがある
この傷あとは
わたしが今日まで
迷いながら
喘ぎながら
叫びながら
ふらふら
よろよろ
生きてきた
唯一の証なのだとおもうとき
この傷を
頼もしくも
ほこらしくも
思うのだ

わたしは何に傷つき
何を憂い
涙をいくつぶこぼしたのか
それだけが
わたしの生きてきた証になるのだ

ああ
だから
魂よ
わたしをいつまでも
剥き身でいさせてくれ
切られても
焼かれても
ぶたれても
こごえても
魂よ
裸のままで
その
むきだしの 無垢のままで






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言葉

わたしはこども
父と
母の

詩は
わたしのこども
父は
言葉
母は
言葉ではない
何か

詩は
本当に
言葉のなかにおさまっているのか

言葉では
訪ねることの
けっしてかなわない
とおい
とおい
むこう
しみだしてくる
そのなにかが
詩の
お母さんなのではなかったろうか








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このあたりは
毎年
じつに多くの蜂たちが
巣を営んで
ぶんぶん ぶんぶん
凶暴な羽音をまとい
シャリンバイや、ツツジのかげから
あっちの空へと
ぶんぶん ぶんぶん
飛び回っているのだという

「さしずめ
蜂の六本木ヒルズか
はたまた青山、成城といったところか」

とにかくそんな場所で仕事をするので
わたしは手の甲を刺されてしまった
指も曲がらぬほどに
腫れあがってしまった手をさすりながら
巣の周りを警戒する
猛り狂った兵士たちを凝視していた

「いやいや
刺される、刺される
ここは蜂地獄だ」

なるほど
蜂地獄
それはよい例えかもしれない
人の住みよいあの街なんかも
よくよくみれば
地獄のように見えるのだから
人間地獄
とでもよぶのだろうか
そう言う人を見たことはないが

「ほれこのスプレーをひと吹きすれば
くるくるまわって落ちていきよる」

こわれたネジのように
つぎつぎ地に落ちていく兵士たちを
わたしはなおも凝視していた
やがて兵士らの守っていた巣は発見され
人の手によって 地にたたきつけられた

おや
足元の巣の中から
いくつもの目の玉が
こちらを見ている






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叙事情詩

ことばの暴風雨のなかならば
かさなんかなんの役にもたつわけがない
目をひらけば目の中に 口をひらけばのどの奥のほうに
間断なく打ちつけてくる あいうえおの驟雨

うえむけばどんどん降ってくるっていうのに
とりこぼしてしまった地面の水たまりのぞきこんで
ああ ぼくが映ってる だなんてナンセンス
せっかくの嵐なら楽しんだほうがいいんじゃない

長靴ぬいで 雪駄でもはいて
合羽をすてて シャツだって脱いで
全身耳にして この弾丸みたいなことばの氾濫
とことんまで遊びつくせたならこたえは簡単

降ってくるものぜんぶ みんな吸いこんじまえ
渇ききった時代のもとでみすぼらしく枯れちまった街路の樹
たかだか 市井の一本の樹 だろうが 枯れてなおその姿勢は反抗期
枯れ木にくまなく雨がしみこめば 何度でも言の葉 めぶかせてみせる

切られたって 折られたって 参ったは言わないんだ
葉っぱ全部むしりとられて「まいっか」じゃないんだ
くるしみのなかで深く地下の闇にのばしてきたこの腕
根を広げてきたことにだってそれだけの意味があるんだ

ふきつづけろことばの暴風雨
まだまだこんなもんじゃ倒れっこない
さけびつづけろ罵詈雑言ストーム
そんなんじゃまだまだ殺されない
全然足りないぞ ことばの暴力
しょせん幻像のなかの妄言って程度
もっとだもっと 幻聴でも上等
全部のみこんぢゃって笑ってやるさ

いつでも耳のそばに ことばがあるって異常
だけどそういう人生をもらっちまった以上
耳すませて叫びがなりわめき いどむ戦場
誰にだってあるわけじゃない これがぼくの事情






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どちらをむいても水平線だけ
島も 船も なにもみえない
空には雲とて みあたらない
孤独な沖にあって ひとりもがいてゐる

自分が泳げるのか どうか
それも思い出せないし
どうしてこんなところにいるのかなんて
頭をひねっても思いあたるところもない

荒くれた波と波のあいだに
ひきつるように 空気をすいこむ
もがく あがく ひとりあばれる
この海の 水の なんと重いこと

音はない
ただ言葉だけがある 隔絶の海
空白に埋め尽くされた ああ 空
満ち満ちているのは言葉ばかり

もがくのをやめ
しばしふたつの手のひらで
顔を覆う
なにから守るのか なにを守るのか

やがて紐を解くようにゆるやかに
とかれた手のひら 胸元にとまり
しずかに むなしく 孤立する合掌
見上げた空から 降り刺さる ああ それはまたしても言葉だ

ここは海
海のまんなか
だれもいない
ただ言葉だけがある
空と海をわけへだてるものはわずかな濃淡
人間の孤独の境にあるのもやはりわずかな濃淡

ここは海
海のまんなか
だれもいない
ただ言葉だけがある







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脳内散歩

ズタズタになった心臓から
あるときはにじみ
あるときはふきだすものが
詩だとしたら
枯渇のときがいつかくるだろうか
血はいつか枯れるだろうか
生きながらにして

死んだほうが楽だろうと
おもうときがある
あたまが破裂しそうに痛むとき
外に出れなくなってしまったときの
あんまりにも無慈悲に明るい外を垣間見たとき
自分がなにものかわからなくなるとき
なんのために生まれてきたなんて考えはじめてしまったとき

さらさらとカーテンからもれる風
かつての嘲笑を再生する脳髄の奥の奥
こめかみのにぶいするどい痛み
それから 生活
これらがなんでそしらぬかおで
おなじ土俵にたっているのか
小気味いいくらい 理解しがたい

はりつけの幻像
血みどろの野菜
わらう刺身のおかしら
くろんぼの天使

まっくらやみのなかにひとり
わらうことで
ゆるしをこう

ああ
生活はぼくにぴったりとくっついて離れない
監視している
その視線がいたい

はきたい言葉を我慢していると
腐る
つまさきから徐々に

ああ
薬を飲み忘れていた
そのせいかな
この憂鬱は






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市ヶ谷で
ニュルンベルクで
うなりをあげた
「正義」
さばかれて
ころされた
「悪魔」たち
夏がちかづくといつもかれらを思い出す

「人道に対する罪」と声高に
あることからないことまで
つっつきころばし
もてあそんでいた
市ヶ谷で
ニュルンベルクで
いったいどんな顔でさばいたのだろう

原爆を
落としておきながら

広島で 長崎で
たくさんの命を一瞬にしてすいこんだ
こどもも 妊婦も 年寄りも
軍事的好奇心の贄として
おとせ
と命じた同じ舌で
ころせ
と命じた同じ舌で
人道に対する罪

言ったのだろう


アルメニアで何がおきてる
ダルフールで何がおきてる
ウイグルで何がおきてる
ウクライナで何がおきてる


みんながみんな 共犯者だ






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シュールな夢がおわり
目をさませば
現実はあいかわらず
やるべきことで満ちている
ちいさな絶望を
ねむけざましの珈琲と一緒にのみくだす

おまえは今日を
いったいどうやって生きるのか
おまえは本当に
もう目をさましているのかと
あさは毎日、ぼくに問いかけてくる
その不必要なほどにあかるいかおで

豊富なひかりの斉射
おしげもないあさのかがやき
そのなかを駅にむかう人々
影もこころなしかまだ軽い
意欲する人々、あるく人々
そのなかの何人が
いま本当に目をさましているのだろう

あさはいつも問いかけてくる
おまえは今日
どのように生きるのだと






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自分とむきあうとき
自分がひとつでないことを知る

灰色の部屋にすわっているわたし
その向かいにすわっているわたし
その隣にすわっているわたし
その正面にすわっているわたし
ずっと向こうにすわっているわたし
それをずっとみているわたし

みながいちどきにしゃべりだすとき
わたしの脳内に雑踏がやってくる
ちょっと黙っててくれ
そのたびに叫ぶのだ
部屋で
夜に
道端で
昼に

ちょっと黙っててくれ

誰にいっているのか
自分でもわからない

そういうとき
人がわたしに何をいっても
何も
まったく
聞こえない
そういうとき
視点はとまり
あおざめて
まるで脈も呼吸もとまったように
うつろだと
人は言う

しずかにしているときほど
わたしの頭の中は
騒音でみちている






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心得

大切なことは
とにかく書くことだ
書きつづけることだ

唇かんで
胸わななかせて
破裂寸前の肺腑から
しぼりつくすまで
しぼることだ

うるさがられようと
つまはじきにされようと
ひとりぽっちになろうと
書くことだ





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亡霊

すなぼこりたてて
むこうの赤茶けた地平線のはてから
どう どう とやってくる
わたしの不安

そこいらぢゅうに
くすんだロープが吊りさがり
先端の輪っかがわらいながら誘惑する
わたしの亡霊

網膜を焦がし
肺を焼き
のどをつぶす
わたしの怒り

こぶしをふりあげても
うちおろす場所のない
この
無様な怒り

周囲に絶えずあった足音が
いつのまにかまったく消え去り
そこではたと気づいた
わたしの孤独


詩はすべて
わたしの亡霊
書いても
書いても
きりがない
実体のないわたし
書いてく
そばから
消えていく

どこへゆくのだらう





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人でない

会社や国を
擬人化するから
いろいろなことが
妙になる

会社に、こきつかわれた
国に、だまされた



こきつかった上司がいれば
そいつを ごちんと殴ってやれ
残業したんだ
よこす分だけキッチリよこせ
と叫べばいい

だました大臣がいるなら
そいつをピストルで撃ち殺せばいい
原発は安全だといったじゃないか
おまえも おまえも おまえも
乱射すればいいのだ

会社なんて人はいない

国は人じゃない

わたしは個人の責任をおいきれないから
擬人化して逃げようとする



卑怯者め




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共食い

ごちそうさまを言わないと
親にたたかれたものだ

おいしいとんかつを
たべるとき
豚の死を忘れていないか

おいしい煮つけを
たべるとき
魚の死を忘れていないか

人が生きていくために
必要とする
莫大な量の


人類はその歴史上
もっとも多くの
同胞をくってきた
おそろしい生きものであることを
忘れてはいないか

今朝はトーストを焼いて食べた
ぼくもいつかこんがり焼ける
その日がくる
君にしろい骨だけをのこす
今朝はトーストを焼いて食べた


この朝の薄暗い部屋で
光る液晶
稼働するパソコン
この電気のために
原発が食い散らかした
あの
無数の死を
もう忘れてしまってはいないか

ぼくの無責任は
ぼくの怠惰は
無数の死のうえで
あまりにも滑稽に生きている


ごちそうさまを言わない子は
ひっぱたくしかないのだ





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自己紹介

偕誠

Author:偕誠
a.k.a.破裂
1983年生まれ。
東京都在住。
双極性障害と苦闘しながら
詩作に励んでおります。


※拙文ではありますが著作権は当方にあります。
無断転載等はご遠慮くださいませ。

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