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タイトル不要

人には
どうしても理解できないものがたくさんある。
宇宙のなりたちだって、ヒトのDNAだって
理解できないものには
自分なりの解釈でもって、その溝を埋めようとする。

膝の痛み、というような小さなことさえ伝わらない。
まして自分自身でさえわからないこの心の痛みを
人に伝えきれるわけもない。
優しさとは、文字通り、人を憂う能力のことだと思う。

ぼくがこの一年、世話になってきた会社は
ぼくが植木屋の修行をはじめてした会社で
そこで勤めてるうちに再発し入院もしたのだから
ぼくの病気のことは知っている。
でもそれは「病気だと知っている」だけで
その苦しみや症状まで知っているわけではない。

体育会系の男だらけのその職場では
ぼくの病気をあえて笑いとばそうとしてくれた。
最初はそこに優しを感じたし、ぼく自身もまた
深刻に考えすぎないように、笑いとばせるように訓練した。
でも、それは次第に「ネタ」のように軽く扱われるようになり
ぼくは「あたまがおかしい」とはっきり言われるようになった。
それは、調子がよければ、みずから笑っておもしろおかしくもできるが
当然、コンディションは毎日いいわけではない。

三週間、外に出れなかった苦しみを
「三週間たっぷり休んだから元気だろう」と思ったのだろう。
静養明けから、かなりきつい日々だった。
仕事の内容にしても、そこで受けるダメ出しにしても
仕事終わりの(完全にプライベートであるはずの)サッカー練習においても
ぼくは一秒とて、心から笑った瞬間はなかった。

もう、ここの人間関係にはつかれた。
そう、ずっと前から思っていた。
それを妻ちゃんにつぶやくと、やめていいよ、といわれた。
主治医にもつぶやいたが、やめたほうがいいといわれた。
貯金はまだすこしある。
入院だってできる。
今一度、しっかり、休むことが必要なんだ。
たたき起こされるように復帰したのが、間違いだったんだ。
その判断ミスによって、消すことできない傷をみずから負い、
いまではもうあの会社には二度と戻りたくない
と、本気でそう思ってる。


今日の昼、雨があがったので
眠い目をこすってふらふらの頭を抱えて
会社の倉庫へ行った。
自分の道具と、足袋などを回収し、すぐに帰ってきた。
同僚の一人には礼服を貸しているし
もう一人には「進撃の巨人」を数冊貸している。
かれらはまた休んで、いつか帰ってくると思ってるのだろうが
ぼくはもう二度と帰るつもりはない。
入院はまだするかどうか迷っているけれど
かれらにはもう入院すると言ってある。
連絡をうけたくないからだ。
辛苦をともにした、ともに笑い、ともに成長してきた
仲間たちと、お別れ。
でもそうすることでしか、いまの自分を救えない。
これ以上、仮面の上塗りはできない。

きれいな月のでた晩の帰り道に泣きながらそう思った。
病院の診察室で、涙をこらえて先生に話しながら、そう思った。

入院するため、土曜(今日)の仕事と
日曜のサッカーの試合は出れません
入院は短くても一か月以上かかります

というような内容だけ昨夜、社長含む
数人の同僚たちにメールで伝え
折り返しかかってきた社長の電話は無視した。
いまは何も言われたくないからだ。
ぼくは社長に相当の恩義を感じてる。
その恩返しのために頑張った。
もう十分だと、思ったのだ。

世の中の
健常な精神を持ち合わせているすべての人に
声を大にして言いたい。
ぼくら精神病患者は
決して甘えていないし
必ずしも弱いわけではありません。
弱ければとっくに病魔に食われ死んでいます。
だから病気を持っていないあなたたちにくらべて
ぼくらが弱いと思うのなら、それは思い違いです。
こう考えてみてもらえませんか。
あなたの最愛の人がひどい死に方で亡くなった。
その翌日が今日で、いまここにいるあなたです。
へらへらできますか。
気持ちを切り替えて笑えますか。
それはできないことではないけれど
並はずれた精神力を要するでしょう。
ぼくらの憂鬱は、そのくらいのものであって
だから仕事も手につかず
笑えず、心はぐずぐずに泣き崩れているのです。
夕焼けをみてしみじみ心に感じるメランコリー。
そんなものじゃないのです。
常に自殺の衝動と戦い続ける
爆弾のようなメランコリーです。

そしてそれが、死ぬまで、断続的にやってくるのです。
波打ち際で砂のお城を作るような馬鹿なことを
必死でやっているのです、これまでも、これからも。
それが病気という宿命です。
もっと、波の届かないところにいきなさい、なんて
言わないでください。
それは、欠陥のない脳でうまれてくればよかったのに
と言うのと同じです。
病気はこの人生を支配しているのです。

蓄えた金も、健康な習慣も
築いてきた信用も、育んできた友情も
すべて洗い流して
遠く沖のかなたまで運び去ってしまう。
それが、ぼくの病気です。
そして波にあらわれた、血の気の引いたような砂浜に
また何かを刻み、掘り、築いていくのです。
徒労になるのではないか、
また波がすべてさらってしまうのではないか
という不安におびえ、唇をかみ、涙を流しながら!
それが、ぼくの闘病です。


ああ、それが
ぼくの一生です。




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NoTitle

偕誠さん。こんばんは。

少し前のあなたはがんばりすぎでした。
もう、十分頑張りました。
あなたはいつも、がんばっている。
はたから見ているだけの私にも、よくわかるほどに。

ネコちゃん元気ですか。
むにゃむにゃすると気持ちいいですよね。

misaさん

コメントありがとう!


> 少し前のあなたはがんばりすぎでした。
> もう、十分頑張りました。
> あなたはいつも、がんばっている。
> はたから見ているだけの私にも、よくわかるほどに。

ありがとう。
そうか・・・
頑張りすぎたのかな。
うつのときに多くのものを失うから
寛解にはいるとそれを取り戻そうと躍起になる。
やりすぎてまたダウンする。
と、いつものパターンなのですけど
結局きづくまでやりすぎてしまうのですね・・・。


> ネコちゃん元気ですか。
> むにゃむにゃすると気持ちいいですよね。

とても元気です(・´з`・)
ぼくが休むといつもとなりで寝てくれてます。
いまも隣の毛布にくるまってちいさな寝息たててます。

NoTitle

こんばんは。

僕も度々病に臥して、その度にすべてを失う事を繰り返す人生なので、
波打ち際で砂のお城を作っては、すべてを波にさらわれ、
また何もなくなった砂浜に、徒労になるのではという不安に怯えながら何かを築く
という表現に、胸が痛い程共感しました。
何度すべてをさらわれてもまた作り直すしかないのだけれど、
繰り返すたび、作り直すのもどんどんしんどくなってきますよね。

人見知りが酷いので、僕からは声をかけられずにおりました。
僕のところにお声をかけていただいき、ありがとうございました。

zさん

コメントありがとう!


> 僕も度々病に臥して、その度にすべてを失う事を繰り返す人生なので、
> 波打ち際で砂のお城を作っては、すべてを波にさらわれ、
> また何もなくなった砂浜に、徒労になるのではという不安に怯えながら何かを築く
> という表現に、胸が痛い程共感しました。

ありがとうございます。
「共感」と言ってもらえると
生きてくのが少しずつ楽になる気がします。

> 何度すべてをさらわれてもまた作り直すしかないのだけれど、
> 繰り返すたび、作り直すのもどんどんしんどくなってきますよね。

そうですね。正直、もうどうでもいいやという境まで
毎回行ってしまうのですが…そのたびのこのこ戻ってくるのは
なぜなんでしょうか。
まだやりたいこと、まだ会いたい人がいるのかもしれません。

> 人見知りが酷いので、僕からは声をかけられずにおりました。
> 僕のところにお声をかけていただいき、ありがとうございました。

プロフィール欄にもそう書いてありましたので
ぶしつけだと思ったんですけど、声かけさせていただきました。
これからも素晴らしい作品を楽しみにしております。
よろしくお願いしますね!

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自己紹介

偕誠

Author:偕誠
a.k.a.破裂
1983年生まれ。
東京都在住。
双極性障害と苦闘しながら
詩作に励んでおります。


※拙文ではありますが著作権は当方にあります。
無断転載等はご遠慮くださいませ。

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