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渾身。

今日はながい一日だった。


明け方3時まで眠れずにいた。

別段、何かを考えているわけでもなく。

ただ、頭の中に声が氾濫していた。

詩人や画家のいうインスピレーションとはちがう。

精神疾患の患者さんを苦しめるあの恐ろしい幻聴ともちがう。

ただ、膨大な言葉。

それが自分の声なのか、誰かちがう人の声なのかもわからなかった。



目を覚ますと、起床の予定を1時間以上こえていた。

今日は植木屋の仕事。

恩を返す、つまり義理を果たすために、

今日という日は大事な日だったのに、これでは遅刻だ。

焦った。ヒゲもそらずに着替えだけ済ませて飛び出そうとした。

携帯を見て、バタバタしていたこころが一瞬止まった。

ぼくがちょうどまどろみはじめた時間、夜中の3時半、

病院から母に、連絡が入り

それこそ着の身着のまま、女性陣が病院に駆けつけていたことがしれた。

血の気が引いた。

けど、同時に、義理と人情ハカリにかけりゃあ…という言葉が浮かんだ。

義理を欠いては、父に合わす顔もない。

この際、もしも臨終だったとして、

そしてもしも、カトリックのいうような天国みたいな場所があったとして

死後、父と対面できたとして、父はなんというだろう。

来てくれてありがとう、ではない。

父の性格は、よくわかっている。

義理を重んじる人なのだ。

ちょっと苦笑いを含めて、情けねえ、と言うだろう。

それはいやだ。


不安なまま、大急ぎで会社へ向かう。

なんとか遅刻はしなかったし、新人さん以外はわが家の事情を知っているから

みな、温かかった。




久しぶりの肉体労働は、しびれた。

骨がきしみ、筋肉が躍動。

勉強、病院で座ってばかりの腰は悲鳴。

汗が歓喜、ほとばしる。

肺は、はっとしてとびおきて、

五感が日頃の鬱憤をはらさんとばかりに猛り狂う。

うむむ…。快感である。


一ヶ月、造園の仕事から離れたが、体は記憶していた。

それが嬉しかったし

久しぶりにあう同僚の笑顔と他愛ない雑談が嬉しかった。

予定より、早く終わり、帰社。

親方に「助かった」と言ってもらえた。

普通じゃん、などと思わないでくださいね。

親方は、そういうこと、普段は絶対、言わないのです。


だから、これはもう、嬉しかった。

同僚にも、照れくさくなるようなことを言ってもらえた。

こうして、少しずつ返していこう。


汗だらけ、傷だらけの作業着姿で、病院に行くのはためらう。

一度帰ろうかと思っていると、妻から連絡あり

着替えと履物をもって病院に向かっていると。

安心して作業着・地下足袋すがたで病院へ。


さすがにICUには行かず、ラウンジへ。

母と妹がだれかと話している。

叔母といとこだった。

会うのは二度目。


父は三兄弟の末っ子。

だが、上のふたりはS姓、父と祖母だけがM姓。

戸籍上、父は私生児である。

それが兄弟の疎遠に、なんらかの影を落としているのだろう。

父の長兄とは、結局会うことかなわず他界。

次兄とは、前の結婚式(以前に書いたかな?ぼくは再婚)で初めて会った。

けれど、それっきりだったから、今日会ったおばといとこも、なんとなくしか覚えていなかった。

でも、来てくれたことが嬉しかった。

わざわざA市から…という母の言葉で長兄の奥さんとお子さんだとわかった。

挨拶がすんで、面会時間まで、みなで父のことを話していた。


濃密な話をたくさん聞けた。

いつかかけたら書こうと思う。



一時間ほどして妻が来て、着替えて、

やっと面会。

たくさん話した。

植木屋の仕事を手伝いにいったこと。

父も若い頃植木屋の仕事をしていたことがあったのに、

ぼくにいわなかったのはなぜか?ぼくは最近知ったぞ。とか。

話したいことが、山ほどあるぞ。

次から次へと湧いてくるぞ。

言葉が、追いつかないほどに。

けど、やっぱり今日も、父は答えられない。

目を開けることもなかった。


ふと、気づいた。

父のベッドの横に、電気ショックの機器がスタンバイしてある。

昨日まではなかった。

今日の壮絶な戦いと、これからさきの不安が

目の前にくっきりと浮かんで、消えた。

なぜかわからないが、それをみて、ぼくはただただ、悔しかった。


あとで聞いた。

その日、父は30回、心肺停止と蘇生を繰り返した。




人はなぜ、生きるのだろう。

と、思わずにいられない。



ぼくはもう一度父と話せるなら、

悪魔との契約書にだってサインしてしまうかもしれない。


生が、ただ眩しい。

死が、ただ悔しい。

父と話がしたい。





おばといとこを見送って、皆がわかれるとき、

母がどこかよっていこう、と誘ってくれた。

見守る家族は、明るさを失わないように、声をかけ合っている。

妻と一緒に、実家へ寄る。

父の遺影を準備しなくてはいけない、という、これは口実だと思う。

みんなでアルバムを見て、思い出を語り合った。

前を向くために。


気づけば日付はかわり、もう終電はない。

今夜は実家に泊まっていくことにした。

妹はまっさきに就寝。

母がやっと、就寝。ろくに寝てないのだ、お疲れ様。

それを見届けて、妻就寝。

ぼくはひとり、風呂にもまだはいらずに

父のパソコンを使って、ブログに向かう。

ここに吐き出すことで、バランスを保とうとしているようだ。



だけど、胸がつまって、なかなか、言葉がてこない。


実家のリビングは、いまのぼくにはなかなか、きつい場所だ。

家族の集合写真が、一葉、めだつところに飾ってあるからだ。




人生の不可逆性。

残酷と思わないように、こころを強く。

人生は一度きり、だからといって、うろたえないように、こころを強く。

一度きり、戻れぬものだからこそ、

いのちは尊いと

もうぼくは、知っているのだから。



後悔のないように生きなさい。

そうであれば、どう生きてもよい。

私はおまえを応援する。

世界中の人間がおまえを否定しても

私だけは、おまえを応援する。


そうだ、あれは16歳の夏の夜だ。

ほしあかりの、うす暗い部屋で

涙と鼻水にまみれたぼくに、

そうだ、父がくれた、言葉だ。




恥ずかしいのだけど、涙が、止まらない

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NoTitle

鍵コメさま、こんにちは!

お客様、宿泊料はすでにいただいておりますw
それは、貴方のコメントですww


ぼくは、これまでの人生を大部分投げ棄てるように浪費してきました。


それをいまそらどうこう、言うつもりはなく
ただ、これからの人生の一瞬一瞬を
悔いのないように、丁寧に、誠実にいきようと思うだけです。


人生、人生といっていると
バカにする人もいますが
バカにする人がバカなのです。
そういう人とは必要がない限り
向き合う必要もないのです。

自分と、自分の手が届く範囲にだけ
生のエネルギーを集中させます。
徐々にその範囲は無理なく広がっていきます。
そのために、生きてます。

コメントに力と
勇気をいただいています。
いつもありがとう!

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自己紹介

偕誠

Author:偕誠
a.k.a.破裂
1983年生まれ。
東京都在住。
双極性障害と苦闘しながら
詩作に励んでおります。


※拙文ではありますが著作権は当方にあります。
無断転載等はご遠慮くださいませ。

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