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父の闘い。

家族が毎日揃うなんて、ほんと二十年ぶり以上。


新しい家族との暮らしに忙しく、

生まれた家族と合う機会は年々減っていた。

父の危篤が、家族をひっぱている。

糸をぐい、とたぐり寄せるような力を感じる。

いまぼくらはこころを寄せあって、温めあおうとしているのだと思う。

明日にも訪れるはずの、大きな喪失にそなえて。

路地裏ののらねこのようだ。


姉があんなに話したのは、初めてだと思う。

幼少期、ぼくは彼女のあとを追って回ったが、

彼女は長女、「栄冠を奪われた」長女だから、

長男であるぼくを疎んじていて、なにかにつけて比肩したがっていた。

彼女が中学時代、クラス対ひとりのいじめにあって、

リストカットをしたときも、

泣きながら叫んだのは、ぼくへの怨嗟だった。

ぼくは夕食の冷やし中華のきゅうりを切りながら、泣いた。

姉に、申し訳なくて泣いたのだった。



ぼくはながいこと、嫌われていたと思う。

それは仕方ない。

思春期には、ぼくも彼女にひどいことをしたのだ。


そんな姉が、ぼくに謝った。

ことあるごとに衝突してきたことを恥じていると。

これからは力をあわせていこう、と。

ぼくは茶化して、逃げた。

どうにもテレくさかった。


姉は娘の送迎のために帰宅。

入れ替わりで母と妹が到着。

面会すんで帰ろうという段になって、

担当の看護士さんから止められ、またも急変を告げられる。

父の場合、急変と言われたときは、心肺停止だ。

この数日間で何度目だろう。

電気ショックで浮き上がる体。

姉が見たままはなしてくれたが、

片脚がなく、やせほそった父の体は、電流が流れるたびに

おおきく、うきあがって、ベッドからおちそうになるのだという。

最初にICUに担ぎ込まれたとき、姉たちも見守る中で

心肺停止、蘇生を何度も繰り返し、

何度目かの電気ショックのあと、

父は医師に「もう、やめてください」と哀願したのだという。

その現場にいなかったぼくは、幸いか?

その現場にいあわせた彼女たちは幸いか?

わからないし、いたところでなにもできないが

その場にいなかったことに、勝手に責任を感じてしまう。

息子として、見ておくべきだったのではないか。

父の闘いを。

いっても詮無いことではあるけれど。

そう思ってしまうのだ。




いつ、逝ってしまうか医師も看護士もわからない。

いま、生きていることが、すでに例外だからだ。

手の施しようがない、とは本音だろうと思う。

だから、面会時間ぎりぎりまでラウンジで母と妹と待機していた。

たくさん話した。書き切れるものではない。

ここに父がいたらなあ、と何度も思った。



明日は植木屋の手伝い。

なまったからだが、どこまで動くか心配だが

しっかり恩返ししてこよう。



この頃、一期一会、とよく呟く。

これは父の好きな言葉でもあったのだと

いま、思い出した。


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secret

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NoTitle


こんばんは

文章で表現出来ませんが

ずっと読み続けます

見守ってるだけの人もいます

NoTitle

shin36aさん、こんばんは。

ありがとうございます。


ああいう記事は、書くのにも、なんというか、

勇気がいります。


そういっていただけて、とても、心強いです。

ありがとうございます。

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自己紹介

偕誠

Author:偕誠
a.k.a.破裂
1983年生まれ。
東京都在住。
双極性障害と苦闘しながら
詩作に励んでおります。


※拙文ではありますが著作権は当方にあります。
無断転載等はご遠慮くださいませ。

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