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ゆうれい

「おまえの家のちかくにさ、ゆうれいでるだろ?」

青白い顔でヒロが言うのです。サチにはなんのことやら、わかりません。
小学4年生にもなって、幽霊に怯えている様子のヒロが、おかしくて笑いました。
「あんた、男のくせに、変なこというね」
青い、と思ったヒロの顔が、みるみるうちに赤く変って、
「ほんとだって!おれ見たもん!」
必死になって、唾をとばしながら話すのです。
どれどれ、ヒロの言い分を聞いてみましょう。サチはおねえさんのような表情を
ちょこんとつくり、ヒロの言葉に耳をかたむけはじめました。唾をよけながらね。

「まず、あたしんちの近くって言ってたけど、どこらへんなの?」
ヒロはおおきな二重のくりくりした目を輝かせてこたえます。
「おまえんちの、前のとおりってさ、おれんちと、田沢さんちと、横森さんちしか
通らないだろう?つきあたりだもん。」
「郵便屋さんは?」
「ばかいえ、郵便屋さんは服でわかるだろ」
「ああ、そう、ゆうれいは制服きてないのね」
ヒロはおおげさに肩をすくませて、ため息をつきます。
「はいはい、失礼しました、つづきは?」
「でさ、おれらみんな顔見知りじゃん。あんなとこ人が通るわけないんだよ、な?
ここまではいい?」
「でも、お客さんとかはくるじゃない?」
「真夜中にか?それも毎日だぞ?」
サチはにやにや笑ったまま首をかしげてみせます。
「あんた、毎日、真夜中までなにやってるの…」
「そんなことはどうでもいんだって。おれんちの二階から見えるんだよ。
髪のながーい、おんなのゆうれい…!」
ははっと、鼻で笑ってサチがさえぎります。
「田沢さんちのおねえさんじゃない。ユキエさんだわ、それ」
「それが、ユキエさんじゃないんだよ!」
ヒロの口がせわしく動きます。あいかわらず、唾が飛んできます。
「だって、ユキエさんは、東京で働いてるし」
「じゃあ、サトガエリよ」
「ちがうよ、じゃあ、おまえユキエさんに会ったか?
いっつもアイサツしてくれるじゃん、ユキエさんだったらさ。
おみやげも持ってきてくれるしさあ、いつもそうだろ?」

確かに、ユキエさんではなさそうなのです。だってユキエさんはいつも明るくて
とても幽霊なんかには見えないのです。
サチやヒロが赤ちゃんのころから仲良くしてもらっていて
帰省の時には必ずお菓子をもって挨拶にきてくれるのですから。
サチは唇をことりのようにとがらせて、ヒロに詰め寄ります。
「じゃあ、誰なのよ、それ」
「横森さんちは、ジジババしかいないし、おまえんちでもないし
おれんちでもないだろ。ってことは、よその人だけど
こんなつきあたりのせまい道に入ってくるのが変だろ?」
「やだ、じゃあなに?泥棒?」
「ゆうれいだろ、どう考えたって!昼間にそいつをみかけることはないんだから。
いつも決まった時間になると、この道をすーって通って行くんだよ
おまえんちの方に向かってさあ!」
サチはうっすら恐怖を感じはじめました。けれどそれはヒロとは違う意味です。
サチは泥棒かあるいはストーカーのようなものだと思ったのです。
「こわい…」
「な、こわいだろ?今日もおれ、監視するから、おまえも見てみろよ」
サチはちっちゃなかわいい舌打ちをして、
「ちがうわよ、親か警察に言わなきゃだめだよ」
「サチってあんがいバカだなー。警察がゆうれいなんて相手にするかよ。
もしかしたら、おれたちにしか見えないかもしれないしさ…」

「夜の10時かっきりだぞ、見逃すなよ!」
走り去っていくヒロの背中で、こきみよく跳ねるランドセルを見ながら
サチはすっかり恐怖を忘れました。だって10時なんて、まだ「真夜中」じゃないんですもの。
ふふふ、ガキね。と笑いながら、サチは家へ帰っていきました。


翌朝、教室でぼんやり座っているサチのもとへ
頬を紅潮させたヒロが、転がるようにやってきました。
「見たか??なあ、ゆうべも通ったぞ!」
サチは薄く目をひらいて、ちょっと 睨むような顔になりました。
「…ゆうれいなんて、見なかったわ」
「はあ??何いってんだよ!通ったじゃん!
おまえ、見逃したのか??」
「あたし、ちゃんと10時に外を見てた。
…けど、ゆうれいなんて、見なかったわ。
あんた、この話、他の人にしゃべらないでね。
ゆうれいなんて、いないんだから…」

サチは昨夜、ヒロに言われた通りの時間に、外を見ていました。
「幽霊」は、田沢さんの家からでてきて、
サチの家の前の細い路地をぬけて、どこかへ行きました。
サチは、「幽霊」の顔をはっきりと見ました。
それは痩せてやつれてしまったユキエさんでした。
すぐにサチは階下におりて、リビングでくつろいでいる
お父さんとお母さんに聞きました。
「ねえ、ユキエさん、帰ってきてたのね?
あたし、いま、家の前を通るの、見たわ」
お父さんとお母さんは、一瞬、表情をとめました。
「ねえ、知ってたんでしょう?
ユキエさん、帰ってきてたのね?
どうして教えてくれなかったの?」
お母さんが、台所を片づけながら言いました。
「ユキエちゃんね、…病気してらっしゃるみたいなのよ」
「病気??そういえば、すこしやせちゃってたみたい。
何の病気なの?治せる病気なの?」
今度はお父さんが答えました。
「脳の病気なんだよ。…サチ、いいか、
いまユキエさんはとてもつらいんだ。
だから、そっとしておいてあげなさい。
来週には入院されるそうだ。
いまは、サチと遊んでくれる元気はないんだよ。
わかるか?
田沢さんの、ユキエさんのご両親もすごく大変なんだ。
いいか、サチ。そっとしておいてあげなさい。」
「…うん、わかったけど…なんていう病気なの?」
「お父さんも、詳しくは聞いてないんだけどね…
こころが壊れてしまうほど、くるしい病気なんだよ」
サチはポロポロと涙をこぼしました。
止めようと思っても、次から次へとあふれます。
かわいそうなユキエさん。
いつも優しくて、明るくて、素敵なユキエさん。
サチの憧れだった、あのユキエさんが、あんなにやつれて。
ヒロに幽霊よばわりまでされて…!
「ユキエさん、夜におでかけしてるのは、どうして?」
重苦しい、すこしの間をおいて、お父さんが答えます。
「それは、誰にもわからないと思うんだ…
きっとユキエさんにもね…」
サチは涙がとまらずに、その日はお父さんと一緒に寝ました。
お父さんは、病気の大人が増えててつらい、
お父さんの職場にも同じような病気の人がいてかなしい、と
サチにしずかに話してくれました。


「ゆうれいなんて、ぜったい、いないわ。」





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年始に、大掃除の延長でブログのデータを片付けていたところ
2014年、2月の記事がでてきました。
珍しくショートストーリーのようです。
そして珍しく最後まで書ききっていたようです。
物語のようにしようとすると、わたしは途中でいつも筆を投げます。
いやになっちゃうンです。
めんどうくさいンですね。
珍しいのに、下書きのままになっていたので公開します。
こんな記事を書いた記憶はまったくないので、
おそらく躁鬱どちらかの状態のときに書いたのだと推測します。
加筆はしないことにしました。

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自己紹介

偕誠

Author:偕誠
a.k.a.破裂
1983年生まれ。
東京都在住。
双極性障害と苦闘しながら
詩作に励んでおります。


※拙文ではありますが著作権は当方にあります。
無断転載等はご遠慮くださいませ。

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