091234567891011121314151617181920212223242526272829303111

脳内散歩「間取り」

真ん中に一つ、大きな柱があって

奥から、その柱まで壁で仕切られている。

手前は、仕切りがないので

左の部屋と右の部屋を行き来できる。

が、これは自分の意思で行き来するのではない。

あるとき、不意に、強制的に、有無をいわさず

左から右へ、あるいは右から左へ、移される。

それについて、ぼくはなにも言えない。

患者が病気を選べないように、ぼくは部屋を選べない。

左の部屋は、大きな窓があり、天井が高く天窓からは

過剰なほどの光がこぼれている。

空気はめぐり、つねに新鮮で、よい香りがする。

とりの囀りや、虫の羽音もよく聞こえ、それらをみな祝福のように思う。

右の部屋は、窓がなく、そのために空気は淀み、それなのに

部屋はひどく乾燥している。潤いがない。

まるで砂漠を部屋に持ってきたかのようだ。

分厚い壁は、わずかな音さえ漏らさないから

寂寞として、寂寥として、無為である。



左の部屋にあるとき、ぼくは

あたたかい温度を肌に感じ、陽気な音楽を耳に聞き、

翼のあるステップで、どこへでもいける、なんでもできると思うのだ。

まるで、神のようだ。

肯定をし、催促をし、激励し、挑戦する。

過剰な光を恩恵と感ずるところもなく

まったく裕福なのだ!


右の部屋にあるとき、ぼくは

あの過剰な光の百分の一ほどでもいいから、と光を求める。

自分が行き来するのだから光も多少ははいりそうなものだが

それがまったくないからだ。

否定し、懊悩し、虚無に謀られ、死を急ぐ。

このとき、ぼくは、地獄をみるのだ。

連行され、投獄されたときに、わずかに残り香のように

体にまとわりついていたひかりを

壊さぬように、そっと摘みとりあつめ

暗闇のなかの機織り機にかけて

すこしずつ、すこしずつ、闇に光を織り込んでいくのだが

これがまったくの徒労なのだ!

わずかなひかりでは、この闇を照らせない!



左の部屋にいたときに、ぼくはいまの妻とであった。

ひかりの満ちた世界でわからなかったことが、

右の部屋に入ったとたん、目を焼くような輝きをもってぼくに教えられた。

彼女がぼくのベアトリーチェだと。

右の部屋に、小さな窓がひとつできた。

月の柔らかいひかりがこぼれる獄舎で、ぼくは喜びに哭いたのだ。

窓の外には彼女がいたのだ!



脳内に地獄と天国をもつおとこ。

おかしなおとこ、ばかなピエロ。

左の頬には神を宿し

右の頬には硫黄のにおい。

笑いながら泣き、泣きながらうたう!

おろかなピエロ、みじめなおとこ。

今日も今日とて一喜一憂、己が境涯に嘆息と満足。

「わが脳内に世界はあり、世界はつねに

左へ右へと揺動している。

ああ、ぼくは、どっちへ転んでもへまをする!」


明るく見えたって、地獄は地獄さ。

そこにひとつ救いがあれば、それがためにそれで生きよ。

ひかりの量に惑わされるな。

過剰なひかりは、闇よりよほどたちがわるい。

明るき部屋では目をつぶり

闇の部屋でのみ目をひらけ。

そして機織り機にはみずからをかけよ

耳を、目を、手をはらわたを、

みずからのすべてを世界におりこめ!

猜疑も、反証も、役にはたたない!






光りあるうちは、黙せ!

とざしてのち、語れ!


君が見ている地獄とやらをさ。


関連記事
スポンサーサイト
にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

コメントの投稿

secret

top↑

comment

trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

top↑

自己紹介

偕誠

Author:偕誠
a.k.a.破裂
1983年生まれ。
東京都在住。
双極性障害と苦闘しながら
詩作に励んでおります。


※拙文ではありますが著作権は当方にあります。
無断転載等はご遠慮くださいませ。

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

リンク

Welcome!

OfficeK

応援おねがいします

ブロとも一覧

検索フォーム

RSSリンクの表示

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR