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ろうそくのこころ

ろうそくが燃えている。

あかあかと、火をつづけている。

わずかな風にも火は、ゆぅらゆぅらと、揺れる。

支えるのは、ほそく、もろく、たよりない、白い体のいっぽん。



まあるく、おおきな月が、それを嗤った。

ほっほっほ

ご苦労なことだ

そんなにちいさなあかりでは、この星たちのなかの

いちばんちいさな星にさえ、おまえはかくされてしまうだろう



ろうそくは、月にこたえた。

そうですね、おっしゃるとおり


月は言った。

わたしをみよ

あかりとはわたしのような輝きをいうのだ

人々に詩想と感歎を与え

ひとときの憩いとなり

童貞を捧げずにはおれないような

美しさ、気高さ

…わたしをみよ

己のちいささを恥じ、そのちいさくたよりない火をさっさと消すがいい

脆弱な火だ



ろうそくは言った。

ぼくのあかりは、あなたのあかりとはちがいます

あなたは、太陽によって輝いているが

ぼくは、自らの命を燃料に、自らひかりを発している

このひかりは、ぼくの生の証明なのです

消すわけにはいかない

消すわけにはいかない


月は言った。

わずかな風にもすぐに揺らぎ、消え去ろうとする

その脆弱な火が、生の証だとは、おそれいる

わたしをみよ、風がふくほど、わたしは輝きを増す

これこそが輝きというものだ

みよ、星たちもわらっている

おまえはじぶんの周りを照らすので精一杯ではないか

わたしや星たちのように

世界にあまねくわたっている輝きをみて

恥じてとっとと消え失せるがいいのだ



ろうそくは言った。

おっしゃるとおり

少しの風でも、ぼくは脅かされます

あなたにくらべて、なるほど弱い

いちかばちか、消えるか否かという瀬戸際で

もえつづける命のひかりです

それはもろく、おろかで、無意味であるかもしれないが

消すわけにはいかない

ぼくはろうそくなのです

このあかりをともしつづけることだけが、生の証明なのです

消すわけにはいかない



月は言った。

たかだか、数時間の短い命だ

燃えるのをやめれば、まだ生きられように

無駄に燃えて、命を捨てるならそれでもよかろう

どうせ、じきに消える

脆弱な火だ



ろうそくは言った。

あなたはいまは、満ちている

けれども、ぼくは知っているのです

満ちれば、この先は欠けていくだけです

ひかりはどんどん弱まっていく

あなたは、これほどに満ちかがやいていたことを

忘れることができぬせいで、おおいに煩悶するのです

ぼくは、たしかに脆弱な火

しかし、照らしたい範囲は、自分の背丈の分だけで

充分なのです

あなたのように、おおきくならなくとも

命を燃料に、自らひかりを発することができる

燃料はやがて尽きるでしょう

風が強ければ、よけいにはやく尽きるでしょう

けれど、その瞬間まで

ぼくはぼくのあかりを崩さない

このちっぽけな、もろい、たよりないちいさな火を



ぼくはろうそくです

命を燃料に、自らひかりを発するのです

ひかりを絶やさず、おわりまで燃えつづけられたなら

誰になんと笑われようとも、構わないのです







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secret

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NoTitle

こんばんは。

言葉が見つからないのです。
おおと思った。
何度も読んで、心が震えた。
でも、その感想を伝えようと、具体的な言葉を探しても、見つからない。
見つからないけど、心に訴えかける、素敵な文章だと感じました。
わたしは、自分自身の力だけで燃え続けることはできないけど、
わたしは、誰の目にもとまらないほどの火しか灯せないだろうけど、
光り続けたい。
燃え続けたい。
そう感じました。

NoTitle

misaさん、こんばんはー。

そう思っていただけたなら、書いてよかったです。
とても嬉しいです。ありがとう。
実は、misaさん含む、ある数人のブロ友さんへの
メッセージとして書いたのです。
これは言うまいと思ってたのですけどね。
あまり嬉しかったので、バラしちゃいました。

NoTitle

はじめまして。
お邪魔しております。

ろうそくの一生懸命に生きている様が素敵ですね。
自らの命を燃やして・・・なるほどなと思いました。
だからろうそくの灯りはあたたかいのですね^^
お月様も勿論好きですがあたたかさを感じるのはろうそくです。
生き物って死ぬ為に生まれてくると私は思っています。
生まれた時から死へのカウントダウンが始まってる。
その死までの間にどんな生き方をするかですよね。
ろうそくの様に一生懸命周りに居てくれる人の為に
あたたかくあろうと思います。

NoTitle

櫻朔春日さん、はじめましてー。
コメントありがとう。
すてきなHNですね。

ぼくもお月様すきです。
ろうそくの言葉をひきだすために
今回は問答役を買って出てくれました。

カウントダウンですね。
それを時限爆弾のように生きるか
それとも太陽のように生きるか
そこがいまのぼくの問題です。

これからもよろしくお願いします。

NoTitle

初めまして、ティアラと申します。

ろうそくという一つの題材からここまでの詩を作り出すとは…大変驚きです!

私も同じ題材で詩を一つ作ったのですが内容も目の付け所も全然違い、

同じ言葉でも書く人によってここまで違いが出るんだなーと思いました。

私もこのろうそくのように笑われても構わない、そんな風に生きていきたいです。

NoTitle

ティアラさん、はじめましてー。

ティアラさんの

「その儚さに私は自分を重ねる」

ぼくすきです。

今後ともよろしくお願いしますねー。

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自己紹介

偕誠

Author:偕誠
a.k.a.破裂
1983年生まれ。
東京都在住。
双極性障害と苦闘しながら
詩作に励んでおります。


※拙文ではありますが著作権は当方にあります。
無断転載等はご遠慮くださいませ。

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