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ぼくの脳みそ

脳みそがくさってるんだ。

うじ虫がわいてるんだ。

きっと、不良品を選んできてしまったんだ。

地上におりてくるときに。



ひとつとなりの脳みそにしたら

健やかに暮らせたのかもしれない。

こんな不安や焦燥に、胸をしめつけられることなく。



自分をコントロールしなさい、といわれて育った。

他の子はみんなやってる、っていわれた。

だから思うんだ。

きっと、この病気は、もってうまれてきたのだと。

だって、コントロールなんてできないんだ。

ずっと、30年間、コントロールしようと努力してきたけど。

できないんだ。



一番うまくいってたのは

植木屋の二年間。

毎日、SNRIや安定剤を飲んで仕事にいって

体をたくさん動かして

あたまもたくさんはたらかせて

へとへとになって帰ってきて、睡眠薬をのんで

ご飯をたくさん食べて寝るんだ。

それでも、薬を切らしたり、わすれたりすれば

すぐダメになったし、

飲んでたって、ダメな時はダメだった。


でも、毎日、草や木や花や石と

たくさん、おしゃべりをしてたから

こころはすこしずつゆたかになったんだ。


幼いころはどうだったかな。

コントロールできないイライラや攻撃性は

通信簿に書かれてた。

お調子もので、乱暴もので、うじうじした少年だった。


中学で、いけない薬に手をだした。

暴力が日常だった。

脳みそをいじめてやるんだ、そう思っていた。

そして20までにはおさらばするんだ、そう思っていた。

セックスピストルズの、シドがすきだった。

バイクのコントロールきかないくらいのスピードがすきだった。

夜しか外に出れなかった。


ヤクザを敵にまわして

いや、あのころ、みんな敵だったんだ。

いよいよ命を捨てる、その瞬間になって

ぼくは逃げた。

いつ死んだっていい、って思っていたのに

いざ殺されるとわかったとき、ぼくは逃げた。

暗い部屋で、父に頭を下げて

剃りあげた頭をなんどもリビングの床にたたきつけて

謝罪して、逃がしてくれと頼んだ。

父は、殺されてこい、けじめをつけてこい

そうしたらおれが敵討ちに、あいつら全員殺してやるっていった。

いま逃げたら、一生逃げることになるといった。

ぼくは泣いて頼んだ。逃がしてくださいって。

十六の、たぶん、あれは夏だった。



なんで、そんな生き方をしてきたんだろう。

親のせいにもしたし、社会のせいにもしたし

学校のせいにもしたし、

人のせいにもした。

でも、世界に欠陥はないんだ。

欠陥は、ただ、ぼくにあったんだ。


眠れないのだ。

夜がとてもおそろしいのだ。

こどものころ、布団の中で震えていたぼくが

まだ、ここにいるのだ。

夜が、どうしようもなく、こわいのだ。

だから、アクセルをぜんぶあけて、スピードをだして、

朝に追いつこうとしてたんだろう。

だから、知らない人とでも寝たのだろう。

夜は、しらふじゃ越せないのだ。



逃げてきてからは

薬が手に入らないし、まっとうに生きると両親と約束したので

酒をつかった。

17歳で、立派なアル中になった。

わけもわからぬくせに哲学書をあさり、純文学に傾倒した。

シドのように死ねなかったから

今度はラディゲのように死のうと

へたくそな詩を書いたりしていた。


なんどか恋をして、そのたびに

すこしずつ人間になっていった。


娘ができた。

娘はかわいかった。

娘のために結婚し、始発から終電まで

娘のために働いた。

休みの日に、こもれびのなかでゆらゆら遊ぶ娘をながめて

ぼくは慄然としたこと、いまも憶えている。

人がみれば、まちがいない「幸福な情景」のなかで

ぼくは、

なんといえばいいのか

破滅を、感じていたんだ。


そう書けば、君が誤解するのは仕方のないことだ。

でも、君に理解してもらおうとは、ぼくは思っていないんだ。

ただ、書く。

ここまで読んでくれたなら、ぼくは書く。



妻だったひとをぼくは憎んでいた。

心のなかで、豚のように思っていた。

そうやって憎むことで、自己嫌悪は日に日にふくれた。

あるきっかけから、ぼくは離婚を決意した。


朝、娘を笑わせながら

トランクひとつもって、家を出た。

娘にはじめて、ばいばいと言った。


堀切のワンルームの小部屋で再スタート。

数ヶ月の間、給料は全額、元妻へ、という約束で。


そこで、いまの妻と出会った。

雷が走った。

ぼくのテオだ。

ぼくのガラだ。

そう思った予感は、正しかった。



けど、壁が多すぎた。

職場恋愛だったし、離婚の流れで実家とは縁を切られていたし。

愛するひとと一緒になるために

それだけのために、使いつくした。

金も、心も、体も。




ある同僚いわく「超人のように仕事をこなしていた」ぼくが

ある日から、まったく動かなくなった。

それまでの人生でも、病院へいったらどうだ、といわれたことは

なんどもあったが、無視してきた。

でも、彼があまりにもしつこくいうので、いってみた。

うつだといわれた。心外だった。

疲れているだけだ。

気安めと思って、薬はちゃんと飲んだ。

さらに暴走した。いま思えば、これが「躁転」だった。

職場で問題を起こした。

固く手を組んでずっと一緒にやってきた常務と課長に

引導を渡された。

部下には恨まれ、面罵された。

デスクを片付けて、昼間のだれも乗客のいない山手線で、家まで帰る間に

よし、死のうと決めた。


東北から、大きな地震がきた。

錯乱のうえに錯乱を重ねた。

交通麻痺、妻は帰らず。

ぼくは久しぶりに、夜の恐怖と向かいあわされた。

とてもじゃないけど、生きていけない。

そう思った。



数日、もだえて、死のうと決めたときは

とてもすっきりしていた。

朝起きて、部屋を片づけて

正装して、ネクタイまでして

遺書を書き、大量の薬と酒をあおった。

死ねなかった。

知識が足りなかった。

最近は、薬では死ねないようになっているのだ。

病院に担ぎ込まれた。

尿道にささったカテーテルをとれ、と

看護士を罵倒して、ぎゃくにこてんぱんに叱られたらしい。

なにもおぼえていない。


気がつくと、勘当されたはずの実家で

赤ん坊のように這っていた。

歩けなかったのだ。

しばらく、赤ちゃん言葉を使っていたらしい。

それもまったく憶えていない。

植木屋の仕事に会うまで、半分廃人のようにすごしてた。







脳みそがくさっているせいで、こういう人生を、歩いてきた。

コントロールするために、さまざまな試行錯誤をくりかえした。

ぼくがいままでやってきたことはすべて、

コントロールするためだけだったといってもいい。

本を読んだのも、あちこちの教会や寺の門をたたいたのも

仕事に熱中したのも、自己啓発セミナーに参加したのも

別れた女がお腹のなかに連れてきた娘を育てたことさえも

すべて。



真理なんて、本当は求めてないのだ。

ぼくはただ、ぼくを知りたいのだ。

他人なんて、本当はどうでもいいのだ。

ただ、ぼくの操縦桿を握ってくれるひとを、求めたのだ。

世界がどうなったって、本当は構わないのだ。

世界に欠陥なんてないんだから。

おそろしいほど、秩序があるじゃないか。

ルールが、マナーが、エチケットがあって、

さまざまな法則があるじゃないか。


ぼくの脳みそにはないものが

燦然とそこにはあるじゃないか。



もう世界のせいにしない。

もうやめる。


歪んでいるのは、ぼくだ。


ぼくの選んだこの脳髄だ。




治療にはいると、今日決めた。

このままではダメだと確信した。

前のようにうまくいく気はしない。

でも、やるだけやってみる。





脳みその深奥

ひとめにつかないところで

ひらいてる傷があるのだ

サードアイのようだ

だけどそれは、ぼくの目じゃない


だれですか?

ぼくを苦しめて楽しいんですか?

それとも試しているんですか?

どうせ、お遊びなんでしょう。

あなたはいったい、だれなんですか?



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secret

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comment

NoTitle

大変な人生ですね><
自分をコントロールできなかったの
私もそんなところがあったかな

中学のころから、鬱っぽい感じがありました
そのころは、精神科に通うことは負けだと思ってました
そして、何年も苦しみました
今も苦しいけど
治療を始めてからは
少しだけ楽になれました。

私はつまらないプライドのために治療が遅れました

でも、こうして出会うことができました。
よかったと思っています。

NoTitle

しっかりじっくり休んでください、
なんて、言うほど簡単じゃないですよね。
でも、なにがあっても、やっぱりからだとこころが一番大事。
わたしはそう、あなたから教えてもらいました。

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NoTitle

ころなさん、misaさん、Neroさん

ありがとう。

ブログやっててよかった。

みんなに、ここで、出会えてよかった。

ありがとう。

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NoTitle


人生で自分が幸せだと思える時間って瞬間だと思うんです

その瞬間が節々になっていろんな形の木が出来る

おおきな森が静かにみんなを包んでいく

Re

Hello, Mr. secret

Thank you for your comment!
I will continue to write to live.

Thank you!

NoTitle

shin36aさん、
ありがとうございます。

大きな森、ですね。
うん、きっとそうだと思います。
その瞬間を、分ちあえること、
幸せに感じます。


みなさんのコメントで
少しづつ元気でてきました。

こっから、這い上がっていくはずです、ぼくは。
見ててください…。

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自己紹介

偕誠

Author:偕誠
a.k.a.破裂
1983年生まれ。
東京都在住。
双極性障害と苦闘しながら
詩作に励んでおります。


※拙文ではありますが著作権は当方にあります。
無断転載等はご遠慮くださいませ。

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