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date :2017年01月29日

いのり

わたしは見た
それは老婆だった
やせた体を車いすにあずけ
汚れたタオルを首からさげ
その片端を噛み
弱く噛み
乱れた白髪は
すべてうしろにながし
枯れかけた頭皮の脂が
それをゆるりとまとめ
えりあしは汚れたタオルに
静かにかかり
微動だにせず
うすくひらいた
まぶたの奥の
黒い
黒い瞳はそっと
ななめうえのほうを
見るでもなしに
見あげている
そうして
なぜかずっと合掌している
弱弱しく
しわだらけの
しみだらけの
骨を透視できるほどの
そのうすいてのひら
小刻みにふるえるてのひら
動かないまなこ
その瞳に何を映しているのか

車いすのハンドルを握る老爺
年輪をかさねたひとつの夫婦
しずかにまわりだす車いすの車輪
それを見ているわたし
老婆は合掌している
ななめにかたむいた首筋から
天人五衰のかおりがする
老婆のかなしみはわからない
苦しみはわからない
介添えする老爺の瞳には誇り
ひとつの夫婦としてあゆんできた軌跡
車輪はまわる
診察室へ
病院の
白く残酷な待合室で
わたしはひとつの神を見た




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東京

東京の街は
いつでもすえたにおいがする
人口が増えすぎて
はしのほうから腐りはじめている
むせかえるほどの
なみだのにおいがする

東京で生まれ
田舎で育ち
いままた東京で暮らしている
東京を呪いながら
東京を罵倒しながら
東京を軽蔑しながら

東京の街では
人はみな身をかざっている
虚しさを隠すためだけに
原色のけばけばしい街中に
するっと溶け込むカメレオンのように

同じ服を着
同じ靴を履き
同じ顔をし
同じことを話題にし

詩など読まず

東京の街では
毎日なにかを棄てている
弁当や服や家電よりも
もっと大事なものを
棄てている
毎日、毎時、毎分、毎秒
自分を少しづつ切り売りしている
ばかみたいに高い
家賃を払うためだけに

東京の街では
毎日そういうショウが見られる
ゆるやかに自殺していく人間のショウ
公園から子供の影はうせて
ビルの谷間には
泣きじゃくる大人の姿の子供がある

夕方の土手に遊んでいる子供たちは
みな幻の世界のもので
日没と一緒に眠りにつく
東京の
汚いアパートの一室に
ビルの谷間の牢獄に
公園のすみのあばらやに
子供たちの夢は眠る

東京の街はまるで
ひとつの大きな墓標のようだ
そこに眠る死体は
なぜか子供のものばかり
墓守たちのうたが聴こえる
時計のすすむ音が聴こえる




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自己紹介

偕誠

Author:偕誠
a.k.a.破裂
1983年生まれ。
東京都在住。
双極性障害と苦闘しながら
詩作に励んでおります。


※拙文ではありますが著作権は当方にあります。
無断転載等はご遠慮くださいませ。

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