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date :2015年05月05日

父に

この道が
多くの人とすれ違う道だといったのは
あなたです
歩む者の
とても少ない道だといったのは

自分とおなじ方向へ
歩んでいく人の少なさも
それゆえのさみしさも
すべてわかっていたことなのです
そんなことはすべて

だれのあとも追わない
だれもあとに従えない
自分だけの歩度で
自分だけの調子で
歩んでいくのですから

あなたがいったのです
それでもおまえはその道をゆけと
それを支持だけはしてやるからと
やっとぼくがその道をゆく覚悟を整えたというのに
あなたはもういないぢゃありませんか

あなたがいったのです
多くの人とすれ違うさみしい道に
おまえは生まれてきたのだと
だからその道をゆくしかないのだと
泣きじゃくるぼくに あなたがそういったのです




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なかった四月

三月の半分と
四月の全部をつかって
ぼくは
自分をとり戻そうとしていた

それは
惨憺たる苦悩と
激しい戦闘との日々だったけれど
友人はそれを一言であらわした

「 」

その言葉に
ぼくは安易にうなづいて
一緒になって笑ったが
こころはいっそう 乱れていた



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おもひで

十五歳、心の中に悲鳴があった
彼はその悲鳴にとらわれまいともがくことが
まったく無意味だということをもう知っていた

十五歳、力に満ちた腕をふりあげた
その先に破壊の夢だけを求めていた
人を傷つけることはまったく無意味だった

十五歳、自分を傷つけることにも倦んでいた
夏の日の午後は酷薄だった
彼はいたたまれなさだけをポケットにしまっていた

十五歳、はみだした腕力がはね踊った
白く明るすぎる廊下で
彼は逃げ場をついに失った
突き刺すように
壁をなぐりつけた
皮がだらしなく剥け
そのいくらかを壁に残した
血がくすぐるように滴り
色のない廊下の床に散った

十五歳、耳はまるで聴こえないように見えた
いくつかの教室から漏れていたいくつかの声が
一斉にとまり
それとほぼ同時に
いくつかの顔が
ぬらりと廊下にのびてでてきた
それらの顔をみて彼はつぶやいた
「まったく、さえねえ」

十五歳、もう一度ありったけの呪いをこめて
壁をなぐった
もう一度
自分の内側にある爆発音に
まったく似ていないその音に
絶望を感じながら
もう一度
廊下の
明るすぎて色を失った床に
執拗に血がとび散った
女生徒たちの喚声
仲間からのあおり
好奇、侮蔑、怒り、羨望
ぐちゃぐちゃに織り交ざった視線が
彼の背中にちくちくささったものの
彼はまったく意に介すことないと演じ
もう一度壁をなぐった
すでに壁は血だらけだった

十五歳、そろそろ骨が見えやしないかと
期待しながらこぶしを見る
ガクガク震えている
「救えねえ」
つぶやく
教員があつまり彼を囲んだ
白い夏の陽は酷薄だった
彼にはなんの関係もないところで
太陽が燃えていたのだ
一人の教員が彼の肩をわしづかみ
強引にひきよせた
教員はそこに予想を裏切る表情をみた

十五歳、憎しみだけを原動力にして
怒りだけを方法としてあがいていた
それは狂った餓鬼の顔ではなく
迷子の、餓えた、泥まみれの、子犬のそれだった
教員がそう思ったことに、彼は気づいた
これ以上の侮辱はないと感じた

十五歳、頬にひとすじ、涙がこぼれた
体をからめとろうとするいくつもの腕を
おしのけ、すりぬけ、彼は逃げた
どこへいくんだ
教員の怒号に彼は答えた
「自らの静脈管の中へです」
それは声に出さなかった
声に出しても仕方がないと思ったからだ

十五歳
まばゆいばかりの生の輝きと
自殺への狂おしい衝動が
平気な顔して共棲していた
彼はまだ
自分を狂人だとは思わなかった
この世界が狂ってるのだと
信じて疑いもしなかった
血をたらしながら
廊下を歩く彼のあとを
追う友人のひとりとてもなかった






『瓦が一枚はぐれました
これから春の日の夕暮は
無言ながら前進します
自らの静脈管の中へです』 ――中原中也





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自己紹介

偕誠

Author:偕誠
a.k.a.破裂
1983年生まれ。
東京都在住。
双極性障害と苦闘しながら
詩作に励んでおります。


※拙文ではありますが著作権は当方にあります。
無断転載等はご遠慮くださいませ。

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