FC2ブログ
0812345678910111213141516171819202122232425262728293010

date :2013年09月17日

骨の記

告別式の前夜は眠れなかった。

当日の朝、ぼくも妻も寝坊した。

慌しく準備して家をとびだした。

そのおかげで、朝からじめじめとせずにすんだ。


妻の家族は、母と姉二人。

歩いて5分ほどのところに住んでいる。

だから電車も同じだった。

これにも救われた。

ぼくはどうあっても泣かずに笑って父を見送りたかったから。


会場へつくと、親戚は皆集まっていた。

かるく挨拶をして、父のもとへ。

昨日とかわらない、まるで寝顔のようだ。


渋滞のために住職が遅れるということだったから

待ち合いの広間でだべる。

親戚や、父の刑務官の仲間だった方など集まってくる。

父にうりふたつの叔父と話しているとかるい目眩がする。

だいすきな叔父なのだが、そのためにあまり長話をできなかった。


時間になり、住職のつく前に式が始まる。

火葬のスケジュールは動かせないため出棺の時間は厳守。

まずは式をすすめ、住職の来着をまつ、ということだ。


セレモニースタッフのやさしい音声が響く。

どういった種類の訓練で身につく声かしらないが

なんとも、白雲のようなやわらかな声だ。

BGMは…なんだったかしら。


住職の来ぬまま、出棺の時間。

棺にみなで花をいれていく。

朝からヘラヘラしていた姉が、突然泣き崩れる。

ドラマや映画でしか聞いたことないような、さけび。

とたんに、ホール中を、すすり泣く、きぬずれのような音がみたす。

ぼくは必死でこらえた。



みな、棺の前で、いつまでも父を見つめ、頭を撫でた。


そこへ住職が走ってきた。なんとか間にあった。

住職、涙を浮かべながら読経。

なんとも、父は、ひとにめぐまれている。

主治医も、臨終の際にぼくがお礼をいったとき、泣いてくれた。

ふたかたとも、ひとの死には日常的に接しているのに。


いよいよ出棺。

みな、地上階へ移動。


叔父、義兄、ぼくをあわせた男7人が

一階のエレベーター前で並び、父がおりてくるのを待つ。

無言のひととき。

斎場には、午前の陽光が氾濫していた。

ばかみたいに陽気のいいことが、この場では救いだったろう。

喪服の襟もとが汗ばむほどだった。



父を霊柩車に乗せて、ぼくらはマイクロバスへ。

一路、火葬場へ。

胸が、すこしづつ、ざわめきはじめていた。


火葬場に働く人たちをとやかくいう気は一切ない。

毎日ひとを焼き、その骨をかたずけるのだから

それは一種の作業にしてしまわなくては、当人たちが狂ってしまうはずだ。

とにかく、その慣れた作業員の手で、すみやかに、そつなく、

事務的に、父は釜へと送られた。


ぼーっとした頭で待ち合い所へ。

ひとの声が耳に入らない。

ただ、酒を飲み、にやにやしている。


一時間ほどたったか。

父の名が放送で呼ばれた。

胸のざわざわが、急激にふくれあがる。

へらへらしてみせていたが、本心は逃げだしたかった。


作業員の方が、父の名札のさがっている釜の前に立ち

ぼくらに名前を確認させる。

深い礼をひとつして作業員さんが、釜のふたを開ける。


さっきまで、威容と歴史と愛情をたたえていた父の顔が

そこにはもうなかった。

糖尿のために失った片脚の切断面を

かわいいと撫でていた父の手も。

散歩がだいすきだった父のあの強健な脚も。

まるでくしゃくしゃにまるめた紙くずのような

ガラクタのような骨が、そこには散乱しているだけだった。

めまい。

現実を、目の前に、むき出しの姿でつきつけられて

やっとのことで、ぼくは父の死を「理解した」。


みなで骨を拾い

斎場へ戻るまでの間

ぼくはただただ泣き続けた。

いきのバスでは、甥と姪の遊び相手に選ばれて

三人できゃっきゃと騒いでいたのに

帰りのバスでは、妻が渡してくれたハンカチで顔を隠し

ただひたすら、泣いていた。

膝の上においた骨壺が熱く

父の最後の体温と思った。


小さな骨壺におさめられて、父はやっと、家に帰れる。


家に帰れる。




…あとは、読経と説教と会食。

これらをぼくはたんたんと過ごした。

会食のころにはまたへらへら笑っていた。





…今日になって、やっと前を向けた気がする。

そうしてやっと、書いておかなくては、と思えた。


書き終えて、ぼくはもう、前しか見ていない。

尽きぬ感謝、止まらぬあふれる思い出、こころの風穴

全部ひっくるめて、一息にのみこんで

ふーーーーっと吐きだすのだ。



生きていける。








にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村
スポンサーサイト



日常へ。

久しぶりに朝寝をした。

だらだら、寝そべっていたのではなく

まじめな、ちゃんとした睡眠だった。

なんというか…

生きるために眠るのだな、ということが

わかるような気がした。


午後、一週間ぶりのバイト。

台風すぎて晴れわたった今日の青空のしたを

キコキコ、自転車こいでいると

ああ、こうして日常へ帰っていくのだなあ、と

すんなり実感させられた。


入社からまだ一ヶ月のバイトなのに

忌引ももらったし、御香典までいただいた。

あくまでも勉強に専念するために選んだ仕事だったが

これからは出し惜しみせず、全力で貢献しようか。

どちらにしても、同じ時間働くのだし。

今回、父のために、会社の貴重なお金を割いてくれたのだし。

報恩、という道だけは、踏み外してはいけないよな。

などと思い、すこし仕事のスタンスを変えた。


小売業は10年。

本気で取り組んできた。

大きな成功もあったけれど、最後に大きな失敗をしてやめているから

(それは双極性障害という病気のせいも、やはりあるのだろうけれど)

そのためか、本気で取り組むことを躊躇していたのだが…

やってみようか。


失敗するたびに、大きくなってきた。

三年前の大失敗に、いまだに萎縮しててどうする。

勉強とのバランス?

なに、気にするな。

どちらも100%やればいいのだ。

それができたとき、ぼくは200%のぼくになっている。



さて、ぼちぼちいくかぁ。




にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

自己紹介

偕誠

Author:偕誠
a.k.a.破裂
1983年生まれ。
東京都在住。
双極性障害と苦闘しながら
詩作に励んでおります。


※拙文ではありますが著作権は当方にあります。
無断転載等はご遠慮くださいませ。

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

リンク

Welcome!

OfficeK

応援おねがいします

ブロとも一覧

検索フォーム

RSSリンクの表示

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR