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date :2013年08月25日

わるもんの美学

ぼくのすきなわるもん。

たとえば、

キリスト教における、ユダヤ人。

政府軍に対する、革命軍。

仙水忍やクロロ=ルシルフル。

モンスターのヨハンや、20世紀少年のともだち。

いわゆる「わるもん」には、美しさがある、と思う。

悪といわれる側、主人公によって最終的にはけちょんけちょんに

やられてしまう側の、悪玉達に、激しい思いを持っていた。

幼い頃、三国志にはまったが、

いわゆる主人公の善玉・劉備ではなく、悪玉のドン・曹操に傾倒した。

董卓や呂布のほうが、おもしろかった。

少年ジャンプが、当時の小学生の間ではバイブルだったが、

ぼくは悟空よりベジータ、幽助より仙水が好きだった。


人の心には、善悪がふたつながら備わっているという予感があった。

決して悪玉は悪だけではなく、

善玉は善だけであるはずもない、という予感があった。

勧善懲悪の物語は、こわく思っていた。

鬼ヶ島の鬼たちの言い分は、完全に黙殺されているのが不可解だった。



それはすぐに体験として証明された。

小学低学年のとき、

クラスでもトップクラスに入る成績の男が、

(仮にKとしよう)

教員には従順で、いわゆるイイコとして何の問題もない

「優秀な」Kが、教員の見ていない所で

脳に障害をもつYちゃんを、バカにしたおしていた。

ばかな仲間を集めてYちゃんを取り囲み、下衆な言葉を吐きかけ、

女子がとめようものなら、さらに調子づき、こづきまわす。

たまらず、Yちゃん、手を出しちゃった。

そいつはしりもちついて、勢い机やらいすやら倒れて

大騒ぎ。

ざまーみろ、とぼくは舌をだしていたが、

その日、教員に注意されたのはYちゃんの方だった。



Yちゃんは、赤ん坊のころ一度心臓が止まった。

お母さんは必死で祈った。医師も頑張って手を尽くした。

Yちゃんは、息をとりもどし、大きく泣いた。

お母さんも泣いた。医師は万歳した。

それだけで、Yちゃんは、すばらしい。

だけど、脳に障害が残って、

会話がなかなかできない。

話すことは支離滅裂で、授業中も勝手に離席するし、

キテレツ大百科のコロスケが大好きなのはいいが、

お母さんに書いてもらったコロスケの絵がなくなると

不意にコロスケーってわめくから、そのたび授業もとまるし、

教員は実際、手を焼いていた。

でも、特別学級ではなく、ぼくらとおなじクラスで一緒に授業を受けていたのは、

お母さんからYちゃんに贈られた、最初の試練ではなかったか。


とにかく、Yちゃんは叱られ、Kは叱られなかった。

その日を境にYちゃんは、クラスでいじめられるようになった。

それまでは、「なんとなく邪魔な存在」程度だったが

それが明らかにかわった。

ぼくは頭にきて、下校のとき下駄箱の前で、

その優秀な生徒Kをなんどもなんどもぶっ飛ばした。

当然、教員にばれてこっぴどく叱られた。

親にも叱られた。

親にはYちゃんのことを話したが、教員には言わなかった。

Yちゃんは、それ以降、ずっとぼくの側にいて

(コロスケの絵をぼくに書かせ続けたので、

いまでもコロスケだけは目を閉じても描ける。)

ぼくも、クラスから浮いた。

ぼくは、ケンカも強かったし、勉強もできたから、

いじめられなかったが、

わけもなくKをぶっ飛ばしたということで、

教員たちから変な目でみられるようになった。

そして、その優秀なKは一連のことで何も注意されることもなく、

むしろ被害者づらで(これはぼくのせいだが)

あいかわらず、クラスの中心にいた。


Kこそが叱られるべきだ、と思い

教員に一連のことを話した。

そこで失望した。

わるものは、ぼくだったのだ。


Yちゃんが授業の邪魔をするから、優秀なKはそれを注意した。

注意されたYが逆上して暴力をふるった。

だからYを叱った。それで解決したのに、

お前がわけもなくKをぶっ飛ばした。

その上、しばらく大人しくしていたYを

甘やかして、また落ち着きのない子にしてしまった。

お前は一体、なにがしたいんだ?

あまり教師を困らせるな。


ぼくは、親の教えを守っただけだ。

義を見てせざるは勇なきなり、だ。

最初に、暴力をふるったのは、Kだ。

ぼくは親から、言葉の暴力というものを教わったのだ。

Yちゃんは、言葉で返せないけれど、おかしいと思ったから

やつを突き飛ばしたのだ。

でも、やつは言葉の暴力をやめなかったし、

まわりのバカたちは調子にのっていじめに加わろうとした。

目には目をだ。

何が悪いのだ。

第一、困らされるのがいやなら、教員になんかなるな。


反論は、教員のため息に呑み込まれた。

バカらしくなって、切り上げた。



鬼ヶ島の鬼たちにも、

きっとなにかの言い分がある。

むやみに征伐していいものか。


Yちゃんは、決してわるくなかった。

でも、ぼくも、正しくなかった。

それなら、わるもんでいい。

萌え出したばかりの、自分の美学に気づいた。

それでは、わるもんでいい。



ぼくには、ぼくの規則があって、

それを破ってはいけない、とぼくが決めたのだ。

だから、そのためにわるもんになることは、避けられない。


そんな必死の決意が、世のわるもんの心のどこかにも

あるような気がするのだ。









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自己紹介

偕誠

Author:偕誠
a.k.a.破裂
1983年生まれ。
東京都在住。
双極性障害と苦闘しながら
詩作に励んでおります。


※拙文ではありますが著作権は当方にあります。
無断転載等はご遠慮くださいませ。

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