071234567891011121314151617181920212223242526272829303109

category :家族

  • 2013.09.14(土)
  • 2013.09.10(火)
  • 2013.09.10(火)
  • 12:09

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

うちの猫、そとの猫




うちの猫は

脱衣所の足拭きマットが

好きなのだ

香箱座りを

すこし、崩して

なにやら考えふけてるのか

人が風呂からでてくると

くるぶしや、足の甲やらすねやらと

ペロペロ、ペロペロ、なめるのだ






うちの近所の

呑み屋の猫は

とくに名前も持たないのだ

誰も知らない場所で遊んで

腹がへったら帰ってくる

今日はたまたま、なんとなく

プランターの中で寝てみてる

これがとっても具合がよくて

ついつい、ウトウトしているのだ



堀切には

名無しの猫が、まあ多い

ぼくはいつか大きく稼いで

堀切から

葛飾から

東京から

世界から

殺処分の猫をなくすのだ


猫の帝国を築くのだ

にゃー。


にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村
スポンサーサイト

父、叙勲




生前の頑張りが、死後むくわれる

本人はどうか知らないが

家族にしたら、これほど嬉しいことはない

生きてるうちに頂戴よ

という気もしないでもない


天皇陛下がくださった、ということで

ぼくには、名誉だ

父を誇りに思う

正五位

国に尽くした父へ

陛下からの「お疲れ様」なのだろう


だからやっぱり、

天皇陛下にはいてほしい

頭じゃない、理屈じゃないんだよ

賞状には麻生太郎氏の名も連ねてあったが

やはり冒頭の「天皇」に

感情が動くのだ



父さん、改めて、お疲れ様でした

天国か、極楽か、しらないけど

そっちで一杯やってください、今夜はね

にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

骨の記

告別式の前夜は眠れなかった。

当日の朝、ぼくも妻も寝坊した。

慌しく準備して家をとびだした。

そのおかげで、朝からじめじめとせずにすんだ。


妻の家族は、母と姉二人。

歩いて5分ほどのところに住んでいる。

だから電車も同じだった。

これにも救われた。

ぼくはどうあっても泣かずに笑って父を見送りたかったから。


会場へつくと、親戚は皆集まっていた。

かるく挨拶をして、父のもとへ。

昨日とかわらない、まるで寝顔のようだ。


渋滞のために住職が遅れるということだったから

待ち合いの広間でだべる。

親戚や、父の刑務官の仲間だった方など集まってくる。

父にうりふたつの叔父と話しているとかるい目眩がする。

だいすきな叔父なのだが、そのためにあまり長話をできなかった。


時間になり、住職のつく前に式が始まる。

火葬のスケジュールは動かせないため出棺の時間は厳守。

まずは式をすすめ、住職の来着をまつ、ということだ。


セレモニースタッフのやさしい音声が響く。

どういった種類の訓練で身につく声かしらないが

なんとも、白雲のようなやわらかな声だ。

BGMは…なんだったかしら。


住職の来ぬまま、出棺の時間。

棺にみなで花をいれていく。

朝からヘラヘラしていた姉が、突然泣き崩れる。

ドラマや映画でしか聞いたことないような、さけび。

とたんに、ホール中を、すすり泣く、きぬずれのような音がみたす。

ぼくは必死でこらえた。



みな、棺の前で、いつまでも父を見つめ、頭を撫でた。


そこへ住職が走ってきた。なんとか間にあった。

住職、涙を浮かべながら読経。

なんとも、父は、ひとにめぐまれている。

主治医も、臨終の際にぼくがお礼をいったとき、泣いてくれた。

ふたかたとも、ひとの死には日常的に接しているのに。


いよいよ出棺。

みな、地上階へ移動。


叔父、義兄、ぼくをあわせた男7人が

一階のエレベーター前で並び、父がおりてくるのを待つ。

無言のひととき。

斎場には、午前の陽光が氾濫していた。

ばかみたいに陽気のいいことが、この場では救いだったろう。

喪服の襟もとが汗ばむほどだった。



父を霊柩車に乗せて、ぼくらはマイクロバスへ。

一路、火葬場へ。

胸が、すこしづつ、ざわめきはじめていた。


火葬場に働く人たちをとやかくいう気は一切ない。

毎日ひとを焼き、その骨をかたずけるのだから

それは一種の作業にしてしまわなくては、当人たちが狂ってしまうはずだ。

とにかく、その慣れた作業員の手で、すみやかに、そつなく、

事務的に、父は釜へと送られた。


ぼーっとした頭で待ち合い所へ。

ひとの声が耳に入らない。

ただ、酒を飲み、にやにやしている。


一時間ほどたったか。

父の名が放送で呼ばれた。

胸のざわざわが、急激にふくれあがる。

へらへらしてみせていたが、本心は逃げだしたかった。


作業員の方が、父の名札のさがっている釜の前に立ち

ぼくらに名前を確認させる。

深い礼をひとつして作業員さんが、釜のふたを開ける。


さっきまで、威容と歴史と愛情をたたえていた父の顔が

そこにはもうなかった。

糖尿のために失った片脚の切断面を

かわいいと撫でていた父の手も。

散歩がだいすきだった父のあの強健な脚も。

まるでくしゃくしゃにまるめた紙くずのような

ガラクタのような骨が、そこには散乱しているだけだった。

めまい。

現実を、目の前に、むき出しの姿でつきつけられて

やっとのことで、ぼくは父の死を「理解した」。


みなで骨を拾い

斎場へ戻るまでの間

ぼくはただただ泣き続けた。

いきのバスでは、甥と姪の遊び相手に選ばれて

三人できゃっきゃと騒いでいたのに

帰りのバスでは、妻が渡してくれたハンカチで顔を隠し

ただひたすら、泣いていた。

膝の上においた骨壺が熱く

父の最後の体温と思った。


小さな骨壺におさめられて、父はやっと、家に帰れる。


家に帰れる。




…あとは、読経と説教と会食。

これらをぼくはたんたんと過ごした。

会食のころにはまたへらへら笑っていた。





…今日になって、やっと前を向けた気がする。

そうしてやっと、書いておかなくては、と思えた。


書き終えて、ぼくはもう、前しか見ていない。

尽きぬ感謝、止まらぬあふれる思い出、こころの風穴

全部ひっくるめて、一息にのみこんで

ふーーーーっと吐きだすのだ。



生きていける。








にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

父の告別式。

初七日、無事におわった。


一日、たくさんの事を考えたけれど

きょうはちょっと、目が疲れきってしまったから

細かいことはのちのち書いていこうかな。



あたたかい言葉をかけてくださったすべてのひとに感謝します。




とうさん、おつかれさまでした。

にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

家族の揺動。

父の通夜式。


午前中、忙しくバタバタと準備してくれる妻ちゃん尻目に

二度寝…。かー。いけませんねー。これだから、いけません。

猫の鳴き声にはとびおきるのにねえと、妻ちゃん、グチってます。

「ねこおじさん」だそうですw

で、彼女はねこおばさん。お似合いじゃないかい。


なんとか起きて、いつもお世話になってる獣医さんのところへ

うちの新入りちゃんを連れていく。

かぜっぴき、おめめぐしゃぐしゃ、ノミは少ない、これらはお薬で。

先生の予想は、生後2ヶ月くらい。

ほかはいたって、健康。

あのこに欠乏してるのは、温もりだ。

先住猫さんと比べても、賢くて、自己主張もある。

強い意思を感じるきれいな鳴き声。

短めにきって、リズミカルに鳴く。

ごはんあげても、ミルクあげてもつづくけど

声かけてなでてやると、すぐとまる。

なんてかわいいんだ!!


なんて、甘い時間を過ごしていたら、あっというまに出発の時間。

妻の喪服姿ははじめて。なんか違和感。

さみしい違和感。


会場へは一番のり。

控え室でぼーっと待つ。妻はお茶のしたく。

長男の嫁、というプレッシャーを感じてるという。

そういう慣習がぼくはどうもすきになれない。

そんなの気にするな。

大事なのは、まごころじゃないのか。

やれるひとがやるのだ。

自分がやれることを、こころつくしてやればいいじゃないか。

無理しなくていいのですよ。


家族が続々あつまってくる。

新入りのねこの話で大盛りあがり。

妹、写真を見て悶絶。49日まてない、明日もらう!

などといいだす。…やだなあ。手放せないなあ。

バカ笑いしてると、係りの方がみえた。

湯灌式。

三名のスタッフさんがこころをこめて、父の体を洗ってくれる。

倒れてから一週間、とうさん、風呂はそんなに好きじゃなかったけど、

すっきりしたでしょう。よかったですね。

妻、号泣。


湯灌式おわり、一度控え室へ。

親戚の皆があつまりはじめる。

あえて、他愛もない話をいとこと楽しむ。

係りの方がみえて、次は納棺式。

棺に入れる前に、スタッフさんに頼んで、父の髪の毛をちょこっと

切らせてもらった。薄くもならず白くもならなかった父の髪。


みんなで父の体をもちあげて、ゆっくり棺へ。

手紙や、好きだった新聞をいれる。

ぼくはタバコを一本。

最後の一本だ。誰にも遠慮しないで吸ったらいいですよ。

酒もめしもがまんして、治療に専念した。

でもタバコだけは、足を切られるまでやめれなかった。

ぼくは自分も未だやめれずヘビースモーカーのままなくせに、

タバコを憎む。

でも、もういいじゃないか。最後の一本です。やってください。


式の途中、祖母がきた。母の母だ。

父は、ぼくの母の両親をこころから敬愛していた。

久しぶりに見た祖母は車いすで、髪の毛は真っ白になっていた。

それまでニヤニヤして我慢してたが、ばあちゃんをみて、一気に涙が溢れた。

一度、決壊すると、もうダメ。

くちびる噛んで、深呼吸。

ほんとうにいいお婿さんだった
やさしくて、やさしくて
ああ、きれいなお顔してる
ほんとうにやさしい人だった

ばあちゃん、もう、勘弁してください。

ぼくは今日は、笑顔でいたいんです。


式終わって、一同控え室へ戻る。

ぼくはしばらく戻れず、姿を隠していた。


その後、坊さんに挨拶し、通夜式。

読経の波の中で、うたたねのような曖昧さで

おもいでのなかに沈み込んだ。

気づけば、焼香がまわってきていた。


式が全て終わり、隣の部屋で、食事。

そこへも、ぼくはなかなかいけず、

父の顔をただぼんやり見つめる。

喪主は母だけど、ぼくは長男。

きっと、やるべきことは、たくさんあったにちがいない。

でも、ダメだった。

とことん、何もできなかった。



妻に手をひかれるようにうながされてやっと着席。

周りはもう出来上がっていた。


父のために多くの人が泣いてくれた。

そしていま、酒を組み交わして、わらってくれている。

なんて、ありがたいのだろう。

人って。

人の優しさに支えられて、やさしくなれるんだな。

ぼくはたくさんの人のやさしさにふれたから、

これをお返ししなくては、いけない。

やさしいひとになりたいとおもいます。

父の寝顔に誓った。


ベロベロに酔っ払った。なんとか、帰宅。



新入りのねこのお世話をしているうちに酔いはすっかりさめた。

きのう、ぼくが「みん」となづけたこのかわいい仔猫。

妹が親になるので、彼女の命名をしぶしぶ承諾。

「おかか」だって。

まあ、名前はなんでも、健やかに育ってください。

…しかし、第二候補の「のりたま」といい、

どうも妹は、ねこをふりかけか何かと勘違いしているようなのだ。



あすは、告別式。

いよいよ父と、いや、父の体と、今生の別れ。

眠れる気がしない。

にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

とびいり新入り。

明日(もう今日か)は父の通夜。

父の通夜、と口にだして見ると、アベノミクス、くらい現実味がない。

なんのことか、さっぱり実感がない。

明日、その場にたって、はじめて知るのだろう。

新しい感情は、あって見るまでわからない。


堀切から、父のいる船堀のホールまでバスを乗り継いで訪ねる。

明日会えるのに、とぼくは言ったが、

妻に「行ったほうがいい」といわれ、すぐ従った。

いままでなん度も、妻の助言を無視して後悔してきた。

妻はぼくのうえいく世間知らずで、勉強もできない。

でも、だれよりもぼくを知っているし、

人間の機微とでもいうのか、芯をしっかりわかっている。

すごい、と最近、毎日のように惚れなおす。


父は眠っているようだった。

部屋には妻以外にだれも見てない。

ああ、なるほど、こういうことか。

父の胸にすがりついた。

明日になれば、とてもできない。

そうすれば、永遠にこの機会は失われる。

そういうことだったのだ。

父さん、この人いれば、ぼくは大丈夫のようです。

安心してください。

ぼくは男になれそうです。



それから礼服の新調、夕食。

いそいで帰る。

わけがあった。

いきしな、とある中華料理店のわきに人だかりができていた。

子猫だった。

ものかげにかくれて、姿はみせない。

おびえてるのか。さみしいのだろう。

あの声は、表現できない。

ガード下なので、電車が通るとかきけされる。

小さなちいさな声だ。

おばちゃんのひとりはそれを「悲痛」といった。

どうやらその人がこのサークルの中心らしい。

すぐそこにあたしの家があんのよ
今日一日ずっとないてんのよ
もう胸がしめつけられちゃって
親猫が帰ってこないのよね

マシンガントーク。

そこで数人のおばちゃん(みんな赤の他人)とぼくらで会議。

話の流れで、その中心のおばちゃんがぼくらに頭をさげた。

連れかえってやってください

えー、ちょっとまってよ。うちにはもうふたり猫がいて、

そのこたちだってまだ甘えたい盛りなのだ。

ぼくは収入減ってるし、とても無理だよ。

んー。

でも、やっぱり、ほっとけない。

妹が、猫を飼いたがっていた。

聞いてみるか。

いずれにしても、まずは父との面会。

おばちゃんに、いまから大切な用事をすませてかならず戻るからね、

と約束して(なんでだ?)、頭をあげてもらった。

もう、こうなっちゃうと、ぼくはダメだ。

ぼくがやるしかない、と思ってしまうのだ。

だから、いそいで帰った。すっかり暗くなっていた。

もういないかもしれない。

先刻のおばちゃんたちのだれかが連れ帰ったかも。

おそるおそる料理屋のわきをのぞく。

ねんいりに見渡しても、猫の姿はない。

諦めて帰ろうとしたときに、電車の音が途切れて、聞こえてきた。

声をたどる。

いた。予想以上にちいさい!

絶対に連れて帰ると、きめた。


およそ二時間にわたる、夜の捕物ばなしははぶいて…。

最後はその中華料理屋の店主と、お姉さんが出てきて

あの手この手で、ようやく確保。

せまいところに、寝そべって、ぴーんと手をのばしてやっとつかまえた。

ぼくは汗ぐっしょり、ほこりまみれ。

みんなそれ見て笑った。妻はあとで褒めてくれた。よくやったっ


おびえる子猫を段ボールで我が家へ移送。

玄関あけると、先住猫さん大恐慌。ごめんねー。

お風呂で泥やホコリを落とし、ノミ取りシャンプーして

撫でながら全身ふきとり、たくさん話しかける。

そのあいだ、妻ちゃん、先住猫にお許しをもらう交渉。

体が乾いたら、そのままお風呂場でミルク。

時間をかけてちょっとずつ飲む。

安心してぐるぐるノドを鳴らすようになったその子を見て

ああ、この子はぼくなんだ、と思い、

我慢してたものがホロリ。







名前はみん。

中華料理屋の名前をもらった。

妹から連絡。

49日終わったら引き取るって。

でも、そのころには、妻ちゃん手放せないかも…。



にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

永訣!

多くの人のやさしさに励まされて

かなしみはいえた。

父不在のさみしさはのこるが

死んでしまったことをいつまでも悲しむわけにはいかない。

母を頼むと、再三父がぼくにのこしたのは

そのためにぼくが気をはっていけることを狙ったのではないか。

ぼくが落ちこまずに、すぐ歩きだせるように

喪失感のつぎにすぐやってくる使命感、

これをのこしてくれたのではなかったか。

ちがうかもしれない。

でも、そうかもしれないと思うことで、

かなしみは去っていった。


今日を生きているぼくには、

やるべきことがたくさんある。

やりたいことも際限なくある。

今夜ゆっくり休んだら

また舞台に戻る。




ねえ。

そうでしょ、父さん。

やってくれたね。

さりぎわ、かっこういいじゃない。

これが、「男の修行」だよね。




敬礼!

61年とひとつきと4日、おつかれさまでした!

あなたの息子である自分をほこりにおもい

これからの生をまっとうします!

あなたがしたように、死ぬ瞬間まで生をあきらめることなく

愛するものをまもるために、男の修行をつづけます!

天下の男になるまでは、あなたのもとへまいりません。

だからゆっくりお休みください。

そしてそのうちまいりますから

そのときは、どうかほめてやってくださいね。

イイコダと、頭をなでてやってくださいね。



敬礼!

あなたは立派な父でした。

あなたのおかげで、どうやら笑顔で見送ることが

できそうです。


さあ、じいさま、ばあさまが待ってましょう。

にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

父との約束

兄であり、先生であり、

保護者であり、親友であり、

目標であり、規範であり、

良心であり、最大のライバルだった。


母を頼むと言われた。

母も、姉も、妹も、泣いていた。

だからぼくは、涙をこらえて

父との約束を果たした。

一日、

頭は冷静だった。


涙はなんども、目のふちぎりぎりまでみちたが

それをこぼすことは、一度もなかった。

帰ってきて、

どっと疲れがでた。

30分ほど眠った。

おきたとき、ぜんぶ夢だったのではないかと

淡い期待がうまれた、が、すぐに霧消した。


父だった何かは

父の肉体を離れた。

体温は、触れるたびに下がっていった。

父は一体どこへいってしまったのか。


今日は何も考えない。


これから、父の家族をぼくが守って行くのだ。

今日ははやく休め。




かんがえなくていい。
にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

父とは、考え方がよく似ていた。


好みも、だいたい似ていた。


河島英五が、ふたりともすきだった。


彼が死んでしまった日

ぼくと父は金沢で、男二人で暮らしていた。

彼の死をいたんで、二人でいつまでも呑んだ。

それこそ「やがて静かに眠る」まで、のみ続けた。



晩秋という曲がある。

コップをはしでならしながら

つまみのするめかなんかを振り回しながら

夜中にもかかわらずふたりで熱唱した。





にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

吐き出す

ものすごい喪失感

あじわったことない虚脱感

かなしみさえない

父の死が、これほど大きいとは思わなかった

すこし休もう

なんだか、気が抜けてしまったにほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

12:09

帰り道、ふりだした雨。

父への、ささやかなレクイエムになればいい。

父は、雨の音が好きだった。

12:09

父、絶息。


涙はまだでてこない。にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

今年はお神輿かつげなかった。

そのぶん、今日はゆっくり休めた、ような気がする。

昨日家族とたくさん話せたのが、よかったのかも。

やっぱり、かなしみやさみしさは

共有することでやわらぐものなのかもしれない。


ふむう。


いろいろ考えることあるのだけど

今日は頭も日曜日みたいだ。


昨日さみしいおもいをさせた猫やんたちと

すりすり、もみもみしながら添い寝。

ういい

↑ういいだって。

ぼく、いつもIPadでブログいじるのだけど、

猫やん、いつも手をふさぐかたちで寝ちゃう。

で、タップしちゃう。

いつもは、んjねfこいbkじぇしぶえbfckぬえfしほんjscjほえふぉいn

みたいになるけど、今日はういい、だって。かわい。



苦しみは、まちがいなく人を育てるし

人生の果実のためには、不可欠な要素だろう。

わかっていても、やはり、苦しみはくるしい。

逃げる、耐える、いなす、ごまかす、闘う、向きあう…

どんな反応を選ぶか。

それはどんな人生を選ぶか、といいかえてもいいかもしれない。

ようは、自分で決めるのだ、人生なんて。

幸せだ、と言える人は、誰がなんと言おうと、幸せなのだ。

ぼくもそうありたい。

つらいときこそ、自分にあるものを

まわりにあるものを、ひとを、しあわせを

ちゃんと感じられるひとでありたい。


窮したときの節度の保持。

日本国民の平和の秘訣、節度。

おかしいかな、と思ったが、あえて消さない。

後日考える材料にしよう。



今日は、もう考えない。

だまって、むきあう。にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

渾身。

今日はながい一日だった。


明け方3時まで眠れずにいた。

別段、何かを考えているわけでもなく。

ただ、頭の中に声が氾濫していた。

詩人や画家のいうインスピレーションとはちがう。

精神疾患の患者さんを苦しめるあの恐ろしい幻聴ともちがう。

ただ、膨大な言葉。

それが自分の声なのか、誰かちがう人の声なのかもわからなかった。



目を覚ますと、起床の予定を1時間以上こえていた。

今日は植木屋の仕事。

恩を返す、つまり義理を果たすために、

今日という日は大事な日だったのに、これでは遅刻だ。

焦った。ヒゲもそらずに着替えだけ済ませて飛び出そうとした。

携帯を見て、バタバタしていたこころが一瞬止まった。

ぼくがちょうどまどろみはじめた時間、夜中の3時半、

病院から母に、連絡が入り

それこそ着の身着のまま、女性陣が病院に駆けつけていたことがしれた。

血の気が引いた。

けど、同時に、義理と人情ハカリにかけりゃあ…という言葉が浮かんだ。

義理を欠いては、父に合わす顔もない。

この際、もしも臨終だったとして、

そしてもしも、カトリックのいうような天国みたいな場所があったとして

死後、父と対面できたとして、父はなんというだろう。

来てくれてありがとう、ではない。

父の性格は、よくわかっている。

義理を重んじる人なのだ。

ちょっと苦笑いを含めて、情けねえ、と言うだろう。

それはいやだ。


不安なまま、大急ぎで会社へ向かう。

なんとか遅刻はしなかったし、新人さん以外はわが家の事情を知っているから

みな、温かかった。




久しぶりの肉体労働は、しびれた。

骨がきしみ、筋肉が躍動。

勉強、病院で座ってばかりの腰は悲鳴。

汗が歓喜、ほとばしる。

肺は、はっとしてとびおきて、

五感が日頃の鬱憤をはらさんとばかりに猛り狂う。

うむむ…。快感である。


一ヶ月、造園の仕事から離れたが、体は記憶していた。

それが嬉しかったし

久しぶりにあう同僚の笑顔と他愛ない雑談が嬉しかった。

予定より、早く終わり、帰社。

親方に「助かった」と言ってもらえた。

普通じゃん、などと思わないでくださいね。

親方は、そういうこと、普段は絶対、言わないのです。


だから、これはもう、嬉しかった。

同僚にも、照れくさくなるようなことを言ってもらえた。

こうして、少しずつ返していこう。


汗だらけ、傷だらけの作業着姿で、病院に行くのはためらう。

一度帰ろうかと思っていると、妻から連絡あり

着替えと履物をもって病院に向かっていると。

安心して作業着・地下足袋すがたで病院へ。


さすがにICUには行かず、ラウンジへ。

母と妹がだれかと話している。

叔母といとこだった。

会うのは二度目。


父は三兄弟の末っ子。

だが、上のふたりはS姓、父と祖母だけがM姓。

戸籍上、父は私生児である。

それが兄弟の疎遠に、なんらかの影を落としているのだろう。

父の長兄とは、結局会うことかなわず他界。

次兄とは、前の結婚式(以前に書いたかな?ぼくは再婚)で初めて会った。

けれど、それっきりだったから、今日会ったおばといとこも、なんとなくしか覚えていなかった。

でも、来てくれたことが嬉しかった。

わざわざA市から…という母の言葉で長兄の奥さんとお子さんだとわかった。

挨拶がすんで、面会時間まで、みなで父のことを話していた。


濃密な話をたくさん聞けた。

いつかかけたら書こうと思う。



一時間ほどして妻が来て、着替えて、

やっと面会。

たくさん話した。

植木屋の仕事を手伝いにいったこと。

父も若い頃植木屋の仕事をしていたことがあったのに、

ぼくにいわなかったのはなぜか?ぼくは最近知ったぞ。とか。

話したいことが、山ほどあるぞ。

次から次へと湧いてくるぞ。

言葉が、追いつかないほどに。

けど、やっぱり今日も、父は答えられない。

目を開けることもなかった。


ふと、気づいた。

父のベッドの横に、電気ショックの機器がスタンバイしてある。

昨日まではなかった。

今日の壮絶な戦いと、これからさきの不安が

目の前にくっきりと浮かんで、消えた。

なぜかわからないが、それをみて、ぼくはただただ、悔しかった。


あとで聞いた。

その日、父は30回、心肺停止と蘇生を繰り返した。




人はなぜ、生きるのだろう。

と、思わずにいられない。



ぼくはもう一度父と話せるなら、

悪魔との契約書にだってサインしてしまうかもしれない。


生が、ただ眩しい。

死が、ただ悔しい。

父と話がしたい。





おばといとこを見送って、皆がわかれるとき、

母がどこかよっていこう、と誘ってくれた。

見守る家族は、明るさを失わないように、声をかけ合っている。

妻と一緒に、実家へ寄る。

父の遺影を準備しなくてはいけない、という、これは口実だと思う。

みんなでアルバムを見て、思い出を語り合った。

前を向くために。


気づけば日付はかわり、もう終電はない。

今夜は実家に泊まっていくことにした。

妹はまっさきに就寝。

母がやっと、就寝。ろくに寝てないのだ、お疲れ様。

それを見届けて、妻就寝。

ぼくはひとり、風呂にもまだはいらずに

父のパソコンを使って、ブログに向かう。

ここに吐き出すことで、バランスを保とうとしているようだ。



だけど、胸がつまって、なかなか、言葉がてこない。


実家のリビングは、いまのぼくにはなかなか、きつい場所だ。

家族の集合写真が、一葉、めだつところに飾ってあるからだ。




人生の不可逆性。

残酷と思わないように、こころを強く。

人生は一度きり、だからといって、うろたえないように、こころを強く。

一度きり、戻れぬものだからこそ、

いのちは尊いと

もうぼくは、知っているのだから。



後悔のないように生きなさい。

そうであれば、どう生きてもよい。

私はおまえを応援する。

世界中の人間がおまえを否定しても

私だけは、おまえを応援する。


そうだ、あれは16歳の夏の夜だ。

ほしあかりの、うす暗い部屋で

涙と鼻水にまみれたぼくに、

そうだ、父がくれた、言葉だ。




恥ずかしいのだけど、涙が、止まらない

にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

父の闘い。

家族が毎日揃うなんて、ほんと二十年ぶり以上。


新しい家族との暮らしに忙しく、

生まれた家族と合う機会は年々減っていた。

父の危篤が、家族をひっぱている。

糸をぐい、とたぐり寄せるような力を感じる。

いまぼくらはこころを寄せあって、温めあおうとしているのだと思う。

明日にも訪れるはずの、大きな喪失にそなえて。

路地裏ののらねこのようだ。


姉があんなに話したのは、初めてだと思う。

幼少期、ぼくは彼女のあとを追って回ったが、

彼女は長女、「栄冠を奪われた」長女だから、

長男であるぼくを疎んじていて、なにかにつけて比肩したがっていた。

彼女が中学時代、クラス対ひとりのいじめにあって、

リストカットをしたときも、

泣きながら叫んだのは、ぼくへの怨嗟だった。

ぼくは夕食の冷やし中華のきゅうりを切りながら、泣いた。

姉に、申し訳なくて泣いたのだった。



ぼくはながいこと、嫌われていたと思う。

それは仕方ない。

思春期には、ぼくも彼女にひどいことをしたのだ。


そんな姉が、ぼくに謝った。

ことあるごとに衝突してきたことを恥じていると。

これからは力をあわせていこう、と。

ぼくは茶化して、逃げた。

どうにもテレくさかった。


姉は娘の送迎のために帰宅。

入れ替わりで母と妹が到着。

面会すんで帰ろうという段になって、

担当の看護士さんから止められ、またも急変を告げられる。

父の場合、急変と言われたときは、心肺停止だ。

この数日間で何度目だろう。

電気ショックで浮き上がる体。

姉が見たままはなしてくれたが、

片脚がなく、やせほそった父の体は、電流が流れるたびに

おおきく、うきあがって、ベッドからおちそうになるのだという。

最初にICUに担ぎ込まれたとき、姉たちも見守る中で

心肺停止、蘇生を何度も繰り返し、

何度目かの電気ショックのあと、

父は医師に「もう、やめてください」と哀願したのだという。

その現場にいなかったぼくは、幸いか?

その現場にいあわせた彼女たちは幸いか?

わからないし、いたところでなにもできないが

その場にいなかったことに、勝手に責任を感じてしまう。

息子として、見ておくべきだったのではないか。

父の闘いを。

いっても詮無いことではあるけれど。

そう思ってしまうのだ。




いつ、逝ってしまうか医師も看護士もわからない。

いま、生きていることが、すでに例外だからだ。

手の施しようがない、とは本音だろうと思う。

だから、面会時間ぎりぎりまでラウンジで母と妹と待機していた。

たくさん話した。書き切れるものではない。

ここに父がいたらなあ、と何度も思った。



明日は植木屋の手伝い。

なまったからだが、どこまで動くか心配だが

しっかり恩返ししてこよう。



この頃、一期一会、とよく呟く。

これは父の好きな言葉でもあったのだと

いま、思い出した。


にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

病院というところ

今日はバイトもないし、用事も全部すませた。

面会は一度に五分だけど、何回いってもいい。

だから、帰るに帰れず、

後ろ髪を引かれるに任せ、

上階のラウンジでぼんやりほうけている。


決して広くないラウンジだから、

聞こうと思っていなくても、誰かが話しているとつつぬけだ。

ここで、昨日号泣していたのかと思うと、

さすがに少しばつがわるいような…。

ただ、ぼんやりと座っているだけ。

目を瞑って、なにとなし、おもうだけ。

さまざまな人が、ここへきて、去る。

座ってるだけで人生観が揺さぶられそうになる。


みんな、なにかを頑張っているんだなあ。

みんな、幸せになりたいんだなぁ。


かなしみも、怒りも、喜びも、楽しみも、

誰のものでもない、と意味なく思う。

けっして、独り占めできないものだ。

この世の不幸を全部背負った気になることも

過去になかったわけじゃない。

その逆も、そうだ。

でも、そうじゃないんだろうなあ、


姉がきたから、続きはあとで。にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

表現できぬという苦しみ。

病院につくと、家族はもうすでに集まっていた。

ICUには、二人ずつ、五分間しか入れない。

まず、ぼくと母が面会。


父は透析中だった。

母が声をかけ体に触ると、うすく目をあけた。

ぼくが来ていると伝えると、

目を開き、首をゆっくり動かした。

昨日は話せた、と聞いていたが、

今日は、この時点で二度の心室細動をおこしていて

呼吸器ははずせない。

つらいね。

頑張ってるね。

昨日の話は妻ちゃんから聞いたよ。

勉強頑張ってるよ。

ぼくは絶対に受かるよ。

確信してるよ。

そう言うと、安心したのか、

父は顔をしかめた。

笑ってるようにも、泣いているようにも、みえた。

つらい?

透析、つらいね。

頑張ろうね。

首をふる。ちがうのか。

一所懸命、話そうとするが、喉の奥深くまで挿さっている

呼吸器が、無情にも(ああ、本当に無情に思えた!)

言葉をうませてくれない。

舌が、わずかに動いている。

一言ずつ、言葉を切りながら伝えようと、父はもがく。

お、か、あ、さ、ん、を、た、の、む、ぞ

だろうか。

つ、ま、ちゃ、ん、と、な、か、よ、く

だろうか。

ゆ、め、を、か、な、え、ろ、よ

だったろうか。

息子なのに、まったくわからない。

わかってやれない。

この悔しさは、文字どおり、生まれてはじめての体験だ。

生半可なものじゃあ、ない。


話そうとすると、喉の奥に挿さっている呼吸器のために、

顔が歪む。おそらく、相当苦しいのだ。

それでも、伝えたいことがあるのだ。

ぼくは、軽いパニックを起こしていた。

話さなくていいよ、苦しいでしょう?

父は顔をゆがめて、首を強く横にふる。

伝える、という思いが、命が、

父の細く弱った体の中から、転がり出してくる。

喉が、苦しそうだ。

のどが苦しいの?

うん、うん。うなづいた。

とってほしいの?

うん、うん。うなづく。

でも、それがなければ、すぐに死んでしまう。

父は、頭はまだ澄んでいるから、そのことはわかっている。

そうまでして、伝えたいことがあるのだ。

遺言、なのだろう。

やりとりを繰り返すうちに、

もどかしさから、父が暴れ出した。

暴れる、といっても、その力は、かなしいほどに弱い。

管や、コードがたくさん体についているから、

すぐに機械が異常をしらせる。

看護士さんたちが飛んできて、面会は終わった。



上階のラウンジで待つ姉と妹の下へ帰り、

どうだった?という問に、

透析中だった、としか答えられなかった。

テーブルに突っ伏して、ひたすら涙を流した。




来るときの豪雨で濡れた全身が、異常に寒く感じた。

自分の無力さに打ちのめされることを、自分に許したくなかった。

泣くことさえ、許したくなかった。

でも、勝手に流れだした涙は、どうしたって止められなかった。



姉と妹の面会が終わったころには、涙もとまり

放心状態から戻ってきていた。

ほかの患者さんからの視線にも気づいたが、

いつものように、はずかしく思うことは、まったくなかった。

母が主治医に呼ばれた。

自宅にかえられても大丈夫です、とのことだったらしい。

みなで、実家に帰る。


妹が飯をたくさん買ってきて、

ぼくに食うようにすすめた。

思いつくかぎりのもっともくだらない話をえらんで、

しいて笑いながら飯をかっこんだ。



妹は自室へ。

母も自室へ。

ぼくは実家に部屋がないから、父のベッドで休んだ。

父の携帯には、ここ数年間の家族とのやりとりがすべて残されていた。

読んでいるうちに、洪水のような思い出のなかで、眠っていた。



起きると、妻がきていて、リビングで母と談笑している。

この二人の女性の強さ、明るさに、何度救われてきたか。

ふたりの、とりとめのない話と、そのなかに織り込まれる笑い声を聞きながら、

また眠った。


姉夫婦が来た。

車で妻を乗せて、面会へ。

ぼくはそのまま帰るため、バイクで。

もう、外は夜だった。

父は眠っていた。四人とも、誰もあえて起こさなかった。

誰の胸にも、明日を信じたいという

はかない希望があったのだと思う。

父の耳もとで、父さん愛してるよ

と囁いて、ICUをでた。



妻は電車で、ぼくはバイクで帰路についた。

こころは、からっぽだった。

帰って、猫にごはん。

妻が戻るまで、ひとり、泣く。

すぐにやめる。

ぼくは、泣いてる場合じゃない。

明日こそ、父の言葉を受けとめる。


ぼくは、父が旅立つまで泣かないと決めていた。

でも、今日、こらえきれなかった。

でも、今日、泣かないと、再度誓った。

悲しみは、父の死後に。

父が生きてあるうちは、感謝と孝行を。

悲しみは、いまは邪魔だ。


だって、いましかないのだから。


死の恐怖は明日がないということだ、と誰かがいった。

いま、その意味を体験した。

明日、彼に話そう。
明日、彼女に謝ろう。
やつも、いつかわかってくれるさ。

そんな甘い先送りが、もう許されないのだ。

明日の世界に、もうその人はいないのだ。

地球上、どこを探して回ってもいない。

完全な不在。

これほどおそろしいことはないじゃないか。

人はそのとき、愛のかけらを喪うのだ。

永久に喪うのだ。

愛にはシリアルナンバーが刻まれていて、

その人が消えると、喪われる。

愛は、常に、動詞だからだ。



自分は、いつ死んでもよいか?

覚悟はあるのか、それはたいしたもんだ。

しかし、準備は?

準備はできているのか?



父を見よ。

伝えたいことを残したまま、人は逝けないのだ。

父を見よ。

死を、正面から見よ。




父を見よ。

目を背けるな。

にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

しずかな時間

朝、家を出る段になって

母・妹から連絡。

心臓はまたもや、動き出した。

そうなると結局ICUのなかにはいられないから

面会時間になってからきなさい、と。


といって、二度寝もできず…。

ゆうべ遅かった妻と猫が寝ているのを眺めながら

考えるでなし、

なんとなく、ぼんやりしていた。

しずかな時間だった。


面会は一時から。

バイトは三時から。

移動には一時間かかる。これがもどかしい。



コメントをいただいているから、返信したいのだが

まだ、言葉がでてこない。

バイトから帰ってくるころには

頭も動いているといいが。


行ってきます。にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

暗転

いま、妹からの電話で起きた。

また、容態悪化したらしく

病院から連絡はいったらしい。


もう少し、気をおちつけてから

ぼくも病院へ向かおう。


20年目の看護士が、こんな生命力のあるひとみたことないって

いってたらしいよ、父さん。

もう一回、みせてくれ。

便箋はまだ、白紙なんだから。にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

ひとまず祝杯を。

薬は確かに効果があった。

なんとか、バイトには行けた。

もちろん、社会人としては、当たり前なのですが…。

その当たり前ができなくなるから、障害なのです。


前半、とにかく仕事に没頭した。

考える事をすこしでも止めたかった。

休憩時間、携帯をみると、

姉からよい知らせが。


面会に行ったら、父がベッドで座る事ができていた。

会話もできた、というのだ。

きのう、一昨日、主治医から

「今夜お亡くなりになってもおかしくない」といわれていたのに。

ものすごい、生命力だ。

父の生への執着は、凄まじい。

ぼくはあらゆる人から、父に似ているといわれるが

ここまではやれない、と思う。

自分なら、諦めていると思う。

定年退職したし、子供はみんな巣立っているし

片脚はないし、透析はつらいし

食べたいもの食べれないし、酒も飲めない。

でも、いきようとしたから、帰ってきたんだ。

その執着が、おそろしいくらい、すごい。

強い男だ、と思った。



バイトで動けないぼくにかわって、妻が病院に行ってくれた。

きのう、もごもごと、ぼくに言えなかった言葉を聞きにいく、と言って。

父に伝える事はないか?と問われ、それじゃあ

大好きだ、と伝えてくれ。とお願いした。

自分の口からは、百年たっても言えない。



安堵した。

軽妙なため息がでて、胸のなかの黒いものが吐き出された。



死が、先延ばしにされただけだが、

これでもう一度話せる。

だって、一昨日、心臓が止まったと聞いて

まってくれ!!って思ったのだ。

話したい事は、まだ山ほどあるのだ。

うまれてはじめての、手紙でもかこうか?

うまくかける気がしない。まったくしない。

ぼくのガラじゃあない。

それでもやってみようか。


ただ、愛している、としかいえまい。

でもそうは言えないから、

無駄な言葉をたくさん連ねるのだろう。

わけのわからない手紙になるのだろう。

それでもやってみようか。


こういうとき、ミュージシャンを羨ましく思う。

こういうとき、言葉が邪魔だ。


まあ、やってみる。



家に帰ると、妻はいない。

腹を空かせた猫にごはん。

ぼくはひとり、祝杯をあげる。


妻は妻で、葛西に残り、

ぼくの母とガールズトークディナーで盛り上がってるとのこと。

どうぞ、ごゆっくり。

ひとりでしずかに考えるのに、よい時間だ。





ああ、音楽と煙草、

それから、にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

死ということ

昨日まで 人のことかと 思いしが おれが死ぬのか それはたまらん
ーーー大田南畝 (蜀山人)





江戸天明の狂歌師、蜀山人の辞世。


実に滑稽だが、他人事ではない。


自らの死は

生と同様に、自ら責任をもって

自分のものとし、管理しなくてはいけない。


きょうの父は

昨日よりも目を開けることができた。

けれど、面会の許された数分の間に

一度も自分の息子に意思を伝えることできなかった。

麻酔と、人工呼吸器のせいだ。

そのふたつで命をながらえながら

そのふたつのために、話すことができない。

話そう、話そうと、必死に口を動かす父を見ていた数分は

数時間にも感じられた。

ぼくからの話しかけには

ちいさなうなずきをもって返すだけだった。



生きている限り、苦しみは続くのだ。

そんな「あたりまえのこと」を目の当たりにした。

それでも、やはり命は、生きようとしていた。
にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

いのち

自分は不真面目だ

いのちに対して、不真面目だ



いのちは

不意に消えてなくなる

そのことを

忘れてはいけない、片時も


きょうもバカヅラひっさげてバイトへ

休憩中にメールをみて

走って早退

父の

心臓がとまったというしらせ



妻は

ずっとまえに父を亡くしている

だから、ひごろから

後悔のないようにと

ぼくをさとしていた

ぼくはわかったような顔でいた


今日でさえ、遅すぎるのだ




病院にすべりこむと

父はICUのなか

なんどもなんども

電気ショックと心臓マッサージをくりかえし

なんとかいう注射をうち

麻酔をかけて

なんとかいのちをつなぎとめている状態だった



葛西の病院までの道が混んでいてよかった

すいていたら、ぼくはたぶんバイクで転んでいたと思う



何時間、そばにいたかわからない

妹がきて、姉と義兄がきた

おいとめいは、まだなにもわからないのだろう

ぼくの顔をみて無邪気にほほえむ

妻もきた

白衣が足りなくなったので

一度ICUのそとへ

頭は白紙




面会時間残り3分

皆がでてきたので

その白衣をかりてもういちどなかへ

父の手を握ると

はじめて目をひらいた

話しかけると、うんうんと

弱々しくうなづく


ほそく、よわくなっちまった

あんなに強かったのに



家にかえってきても

なにもできない

ただ、いまのことを

かきとめておこうと思った




ぼくは、いのちに対して

あまりに不真面目だった



まったく、だめな息子だ



にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

自己紹介

偕誠

Author:偕誠
a.k.a.破裂
1983年生まれ。
東京都在住。
双極性障害と苦闘しながら
詩作に励んでおります。


※拙文ではありますが著作権は当方にあります。
無断転載等はご遠慮くださいませ。

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

リンク

Welcome!

OfficeK

応援おねがいします

ブロとも一覧

検索フォーム

RSSリンクの表示

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。