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category :スケッチ

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わたしと詩

わたしの詩
わたしにとって
これ以上価値のあるものがあるだろうか
家族も
友人も
仕事も
趣味も
どれも大事なものにちがいないが
どれもわたしの詩の養分となる
そのためにあるとさえ
感じるときがある

わたしの死
昨夜も死をおもって
胸を患った
心臓を万力でしめつけられるような
喉から泥が吐きだされるような
この病は
生涯、完治するはずはない
生きている間中
わたしはつねに
「死」につき纏わられている
陰鬱な探偵
決して姿を見せることなく
執拗にわたしを尾行している
いつ、どこででも

わたしの詩
死の探偵がみはっている
わたしの後ろから、ななめ後ろから
ななめ前から、ときに、目のまえで
死を思うとき
わたしは孤独の極致へ拉致される
自分の体がふわりとうきあがって
自分のものではないように感じる
やがてくる絶対の漆黒
不可避の重く青い桎梏
それに向かいあうために
わたしの詩はある

わたしの詩
今日、仕事帰りにみたあの夕焼け
りんご飴ほどに赤い、稚けない太陽
その太陽に背中をやかれた昼の仕事
玄関でわらってわたしを出迎える妻
家中をあるきまわって思案顔する猫
掌のなかにあるかなしみ、よろこび
そこからこぼれるさみしさ、おかしさ
踏切のまえでカンカン、カンカン
わたしに訴えてくる何か
赤信号、赤い太陽、赤い血
目のまえをかすめるようにすぎる
電車の轟音と、その盗賊のごとき疾さ
共鳴するかのように身震いする心臓
わたしの赤い心臓

わたしの詩
この街並みも、この茜色の空も
あのひとも、このひとも
孤独なわたしも
おそろしい夜の闇も
あふれかえる感情も
もてあます虚栄心も
書かれるのを待っている
右も左も、上も下も
南も西も、東も北も
明日も、昨日も、はるか昔も
すべてのものが
ずっと
わたしに
書かれるのを待っている

そのときわたしは思ったのだ
わたしが詩なのだと
自分の外のものを追い求め
ないことを嘆き
新しいものをさがすことはない
それはつまり
書く必要すらないということ
なんのために生まれたのか
それがはっきりとわかった
わたしは一篇の詩だったのだ

わたしは詩
わたしが詩

皮膚の下を赤いインクが流れている
子どものほっぺたほど赤い
りんご飴ほど赤い

わたしは詩
世界を踊る




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かつての未来

後悔の薫りがする

数多あった
あの輝かしい未来は
どこに置き忘れてきたものだろう

過去に
たしかにあった
未来のたば
未来は選べるほどにあった
煩雑をとおりこして
滑稽なほどに
未来はわたしの手のひらから
こぼれたものだ

うるさくて
うるさくてたまらなかった
こっちの未来はよいぞ
こっちの未来はよいぞ

十五、十八、二十
ノートの端に並べられた数字
その横には
その歳のころの
なるべき自分
予定
美しい調和
輝く未来

でたらめな活力だけの
その筆跡
まるででたらめ
荒唐無稽

それでも
外が嵐で眠れぬ夜には
己の胸のうちの嵐をせめて
鎮めようとして
書きなぐっては微笑んだものだ

わたしはついぞ
そういったたのしい落書きを
書かなくなっていた

「雨おとを聴くのはずいぶんひさしぶり」
外は夜で雨降りだ
妻の言った他愛もない一言に
わたしは慄然とした

過去
時間がありあまるほどあった過去
戻れぬ過去
終わったもの
とりかえせぬ時間
あのころのわたし
汚い小部屋で
書きさしの短編の構想を練るふりをして
窓の外の雨音を一心に聴いていたわたし
激しい恋をして
大笑いしたり泣きじゃくっていたわたし
シャツを血だらけにして靴をうしない
大雨のなか叫んでいたわたし


思い描いていた未来の輝きを
このいまの生活に見出せぬから
頭をかかえこむのだろう

流すための涙すらもうとうに失い
残された時間のみじかさに驚き
そしてその疾走する時間のふところに
抱きかかえらえてしまっている己の姿が
あまりに不憫で鳴くのだろう

ノートの端に
今の年齢を書く
34
もうその先には
無限のパラレルはない
胸のときめきはそこにはない
焦燥と
厭世と
矛盾と
妥協と
妥協と
妥協と
そして大きな虚無感と
さらに大きな喪失感と
それから
それだけが真理だというような顔で
一番最後には死がかまえている
玉座にすわりこちらを見ている
命の残量のすくなさに
ただただ嗚咽をおしころすことしかできない

いましがた薫製場からでてきた
つかれた農夫のように
体中に後悔の薫りがするのだ

かつてあったあの輝かしい
未来たちは
活力と意欲にみちたあの時間たちは
わたしの気づかぬ間に
いったいどこへ失せたのだ
いったいどこへ失せたのだ
いったいどこへ失せたのだ
わたしの許可もなく

盗まれるようにして
失せていったわたしの命
ちがうでしょう
浪費してしまったわたしの命
歯噛みするほど
悔しくなってしまったから
わたしは後ろをふりかえり
目をこらして探すけれど
その道程は
あんまり急なものだから
ほとんどなにも見えやしない

死が
時間を生むのだろう
だからわたしたちは
いつも時間に追われているのだろう



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さなぎ

わたしは芋虫のように
この数日間を過ごしてきました
家からもろくにでず
別段なにかを考えるでもなく
働かず
ただひっそりと生きていました

世に棲むおおくの人が
働いている時間に
わたしは芋虫のように
布団にくるまって
過ぎてゆく時間を見つめていました

ほかになにができましょう
芋虫は芋虫です
未来、蝶になるとしても
芋虫はいま芋虫でしょう

さなぎをはさみで切ったときに
どろりと流れたあれは
芋虫でしょうか
蝶でしょうか
そのどちらでもないのでしょうか
そのどちらでもあるのでしょうか

姿、さだまらず
自力で動けず
ただ風にもてあそばれるばかりの
どろどろとした
いまのわたしは
芋虫でしょうか
蝶でしょうか

外敵からわが身を守るため
いささか堅固に過ぎたこのさなぎは
内からはもう開かないのではないでしょうか
ただ窮屈に身をかがめ
丸まることを強いられて
折角できあがったその羽も
かたいさなぎの中で
そのかたちを醜くゆがめられ
その機能をうしない
その夢見ていた明日の蝶ではない
グロテスクな畸形のかたまりに
なってしまうのではないでしょうか

芋虫は蝶として生まれるのでしょうか
芋虫は芋虫として生まれるのでしょうか

芋虫は蝶を生み出すのでしょうか
もとより蝶であったのでしょうか

わたしは明日に
蝶となれるのでしょうか






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東京

東京の街は
いつでもすえたにおいがする
人口が増えすぎて
はしのほうから腐りはじめている
むせかえるほどの
なみだのにおいがする

東京で生まれ
田舎で育ち
いままた東京で暮らしている
東京を呪いながら
東京を罵倒しながら
東京を軽蔑しながら

東京の街では
人はみな身をかざっている
虚しさを隠すためだけに
原色のけばけばしい街中に
するっと溶け込むカメレオンのように

同じ服を着
同じ靴を履き
同じ顔をし
同じことを話題にし

詩など読まず

東京の街では
毎日なにかを棄てている
弁当や服や家電よりも
もっと大事なものを
棄てている
毎日、毎時、毎分、毎秒
自分を少しづつ切り売りしている
ばかみたいに高い
家賃を払うためだけに

東京の街では
毎日そういうショウが見られる
ゆるやかに自殺していく人間のショウ
公園から子供の影はうせて
ビルの谷間には
泣きじゃくる大人の姿の子供がある

夕方の土手に遊んでいる子供たちは
みな幻の世界のもので
日没と一緒に眠りにつく
東京の
汚いアパートの一室に
ビルの谷間の牢獄に
公園のすみのあばらやに
子供たちの夢は眠る

東京の街はまるで
ひとつの大きな墓標のようだ
そこに眠る死体は
なぜか子供のものばかり
墓守たちのうたが聴こえる
時計のすすむ音が聴こえる




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いのり

わたしは見た
それは老婆だった
やせた体を車いすにあずけ
汚れたタオルを首からさげ
その片端を噛み
弱く噛み
乱れた白髪は
すべてうしろにながし
枯れかけた頭皮の脂が
それをゆるりとまとめ
えりあしは汚れたタオルに
静かにかかり
微動だにせず
うすくひらいた
まぶたの奥の
黒い
黒い瞳はそっと
ななめうえのほうを
見るでもなしに
見あげている
そうして
なぜかずっと合掌している
弱弱しく
しわだらけの
しみだらけの
骨を透視できるほどの
そのうすいてのひら
小刻みにふるえるてのひら
動かないまなこ
その瞳に何を映しているのか

車いすのハンドルを握る老爺
年輪をかさねたひとつの夫婦
しずかにまわりだす車いすの車輪
それを見ているわたし
老婆は合掌している
ななめにかたむいた首筋から
天人五衰のかおりがする
老婆のかなしみはわからない
苦しみはわからない
介添えする老爺の瞳には誇り
ひとつの夫婦としてあゆんできた軌跡
車輪はまわる
診察室へ
病院の
白く残酷な待合室で
わたしはひとつの神を見た




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鳥かご

鳥かごの鳥
おまえはなぜそこにいる
翼もある
きっとまだ飛べる
もがけば
不格好でも
きっとまだ飛べる
それなのに
おまえはなぜそこにいる
いつまでそこでそうしてる
小さなくちばし
せわしくうごかし
叫んで鳴いてなにになる
水はあり
餌もある
おまえは知らぬふりをするが
そこには自由だってほんとうはある
おまえはそのかごからいま外へ
飛びだす自由をまだもっている
それなのに
みずからおりの内にこもり
守られ
与えられ
あたたかい惰眠を啄みながら
ちいちいちちち
不満をくちざすんでばかりいる
嘆きを
憤りを
悲しみ
孤独を
寂寥
不安を
後悔
懺悔を
ああ
鳥よ
おまえがそのかごにいるあいだは
そのくちばしで歌うそれらの歌は
みんな嘘だよ
みんな嘘だよ
鳥かごの鳥
飛べないのは
鳥かごのせいではない
空はあり
おまえを待っている
いまもおまえを待っているよ


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風のなかを歩く

ぼくにひとつの
ポケットがある
かなしみを
いれておくための
おりにふれて
とりだして
さわってみるための
ポケットがある

そこに両手をつっこんで
ゆびさきでころころ
まさぐりながら
風のなかを歩いている
歯食いしばるうち
しめってしまったのどちんこ
空にむけて
乾かすために
言葉でないもの
叫んでみたり

ふと
風が吹いたくらいのことで
ぼくらはたやすく
狂うのだろう

ポケットから
ひらりこぼれた
ひとつの言葉
「あんたにひかりなんてなければいいのに」
蹴とばして帰り道
そのときも
あのときも
風のなかを歩いてきたのだ

ぼくらは
この夏の
青い嵐のなかに
ひとりぽっち
さみしくなんてない
ひとりぽっち
祈るように
風に向かう

ふと
雲がしりぞいて
陽がさしたくらいのことで
ぼくらは
たやすく
狂うのだろう

ぼくにひとつのポケットがある
そこに両手をつっこんで
ぶっきらぼうな顔をして
風に涙を乾かすのだ
風のなかを歩くのだ





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鬼火

ぼくが死んだら
燃やすでしょう
腐ってゆく
すがたを
見られずにすむ
だれもそれを
見ずにすむ

そのとき
ぼくのぬけ殻を
塵にもどすために
ひとが
淡々と
事務的に
たきつけるかまのなかの炎と
この
一秒の渾身
命の炎と
どちらがはげしいものでしょう

ひとは生ごみ
燃やさなければ
腐ってゆくだけ
生きながら
腐ってゆくのは
いやだから
こうして こう
燃やしつづける
生きながら
腐ってゆくのは
いやだから
そうして祈る
死んだとき
ぼくを燃やす地獄の火より
いま生きるため
燃やしつづける
この魂の
この炎の
ちからがまさっているように
どうかまさっているようにと






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さくらの咲くころ
きまって憂鬱になるわたし
アスファルトの上を
音もなくすべりゆく
白いちいさな花びらさらり
それを見るたび胸にいたみ

どうしても
死にたくなる
まわりを見わたせば
ひとびとは
春のよそおい
わたしは帽子を目深にかぶる
なるべく春と
目をあわさぬよう
目をあわさぬよう

そうだ
百億枚の
さくらの花びらをあつめよう
あつめたら
東京の
高いビルの上から撒こう
きつとわたしと似たような
ひとびとが胸を両手でおさえ
その場に倒れこむだろう
その数を
わたしはビルの上から勘定しよう

やつた
これ
みな友達だ
わたしと同じ苦しみだ

きつと痛快な気分だろう
いつから咲いたかこの胸中に
ふるえているこの悪意の花を
うすももいろの花びらに似せ
世に撒くことができたらば
誰のものともしれぬこの悪意
天衣無縫の幼児のころから
かいこのようにわたしの胸を
さあさあ喰らって
きづけばほら
こんなに大きくなってしまった

花明かりの向こうがわに
今度こそわたしは
この悪意をつきかえす







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ねむれ

何を書いてもしっくりこない夜がある
それでも書かずにはいられない夜もある

そんな夜には
いつもの何倍も頭を掻く
頭がかゆいのではなく
脳みそがかゆいためだろう

あまりにもおおくの感情と言葉をまえに
どれを選ぶかなどというのは
あるいは正気ではできないのかもしれない
それに納得することなどは

だからそんな夜はむしろ
ぼくは正気に近いのかもしれない

にじみだす狂気が
詩を書かせるのだ

かつてはセンチメンタルがインクになり
懺悔と後悔のなかに自己愛のペンがあった
自画像を描くつもりで
いつまでも偶像を追いかけていた

いまのぼくは
詩では酔わない
むしろ醒めていく
透明な狂気がそこにある

今夜はそれをつかめない
内心の欲求には
とてもこたえられそうにない
だから眠れ

つかれたたましいよ
あわれなてのひらよ
眠れ



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植木屋の爺が
その年輪のようなしわに模様された
ごつごつしたかたい手で
やわらかく蝉をつかまえた

やかましく
ほうぼうから聞こえる蝉の声
太い幹にむらがっていたり
こずえのほうから叫んでいるようだったり
熱せられた電柱にしがみついていたり
けれどもその爺につかまった蝉は
ずいぶん前から地上にいた

日陰で
休んでいたその蝉は
羽が片方ちぎれていて
どうやらもう飛べないようだ
植木屋のあんちゃんが来て
足袋のつまさきでころがしたときなどには
狂ったようにもがきまわり
残された片方の羽を土にこすりつけながら
くるくる、くるくる
回ったりしていたが

時雨のように降りかかる
蝉たちの声のかさなりの中で
そいつはいっこう鳴こうともしない
もっとも
おおきな声で鳴いたところで
助けにくるものもないだろう
いつどこで羽を失ったものかぼくは知らないが
ずいぶん間抜けなやつなのだろう
ちいちゃな枯葉のようなその羽
ちぎれてみすぼらしいその羽を
ぼくはぢっと見つめていた

そのちかくには
こま切れにしたなにかを運搬する蟻が無数にいた
からからに干された蚯蚓がいて
そこにも蟻がむらがっていた
仰向けにこらがったカナブンのむくろにも
いままさに蟻があつまってきて解体をはじめていた
ぼくはそれらをぢっと見つめながら
弁当をほおばっていた

夏の
鋭利なやいばのような陽のしたで
それらの活動はむきだしに晒され
ぼくのからだの骨まで晒され
あまりにも露骨に生死がそこに晒されて
どのむくろも生き生きとむくろだった

植木屋の爺は
つまみあげたその蝉を
そばのちいさなアオダモの葉によせて
ほら、がんばれよ
などと言って励ましているが
奴はびいびい鳴いてあばれるばかりで
ちっとも枝につかまろうとはしないのだ





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今日いちにち
こころみに
自分はもう死んだのだと
思いこんで
生きてみやうか
そうすれば
あわよくば
風のやうに
生きられはしないだらうか



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24/7

いちにちに
わたしは幾時間
詩人であるのか

植木をいぢりながら
詩人であることが
できるのか

夫でありながら
詩人であることなど
できるのか

空にむかい
木にむかい
人にむかい
真摯に生きるとき
こころの空洞のところにひびく
言葉が
こだまする
そのときに
がっしとつかむ
その掌が
わたしに言う

できる。






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生業

海から奪い
森から奪い
山から奪い
空から奪い
地球から
搾り取るだけ搾り取り
ついに神から奪いはじめた

けれど
わたしたち詩人は
忘れてはいない
それより遥か昔から
人は人から奪ってきたこと

人は奪うことのみで
生きてきたこと





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ある鳩の死

ひからびた内臓
夏の酷薄な烈日と
朝からごんごんと吹き荒れた風とに
からからに乾ききった
おそらく鳩らしきものの骸

アスファルトの車道に
ぴったりとはりついた
鶴の家紋のようなその姿
それはきっと最後のはばたき
まばたきほどの短い命
祈りのようにうまれては消える

おまえのちいさな死
それは人間とておなじことだ

鳥よ
お前が生きているうちに
わたしはお前をみただろうか
それともわたしたちはすれ違ったまま
とうとう出会うこともなかったろうか
こうして骸になったお前を
ただ見つめるために出会ったのか

なぜかしら
どこからか
お前の視線を感じるようだよ

鳥よ
お前は空中をとびまわることはもうやめて
空中そのものとなるために
この夏のなかに溶けこんでいったのか
ここにぺしゃんこの骸だけを遺して

どこからかお前の視線を感じるようだよ
鳥よ




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誕生日

なにもかもに苛立つ
なにもかもが癇に障る

40分かけてバイク
出勤しながら迷う
休みたい
なにもしたくない
このまま対向車線にはみだしたい

会社について
社長が謝る
70超えたじいさんが謝る
謝られればこっちは情けなくなる
恥じる
たまらなくなる

わかりました
社長の誠意は
おれも昨日休んで考えました
もうしこりは消えましたから

でも今日も一日休みをください
もうやってられない状態なんです
病名はいいたくないです
言えばみんなすぐに勘ぐる
おれのこと狂ったやつだという

給料もらって帰り道
ツレの会社によってお土産のメロン
バッグにつめて帰り道
対向車線に迷い込む
そんな夢見ながらなんとか運転

うるさいうるさい
莫迦みたいな車の爆音のマフラー
死ねやどいつもこいつもうざったい
音の出ないイヤホン耳の穴につっこんで
ぐうの音もでない
仕方ない
これが病気ってやつだ「人とはちがう」?

病気のせいにするなとかいうやつ
一日でも半日でもいいよ
おれとかわってみろ
「自制心がたりない」?
「メンタルが未熟」?
だから一日かわってみろって
おれの精神力の強さがわかるから

爆発、叫喚しそうなメンタルかかえて
袖とおす作業服
気がふれそうになりながらも
なんとか会社までたどりつく
五里霧中
幻想の花に悪酔いしながら
なんとか家まで帰りつく

それだけの一日になったって
どれだけの辛酸なめたって
もうどうでもいいよなんだって
言ってくれるな「頑張って」なんて
くだらねえ

反吐がでる思いで
やっとの思いで家に帰り
腐ったゴミ箱のような悪臭はなつ
自らの心臓のなかにおかえり
ただいま
腐敗の子供
抱きしめて眠れ

ああ
今日はおれの誕生日だったな

じゃじゃうまの躁と
死にたがりの鬱の
間にはさまれて
「HappyBirthday」
妻の言葉に苦笑い
それでもおれの心はひらかない
鏡にもおれは映らない
なんにも耳に響かない

ああ
今日はおれの誕生日だったな
あわや命日にもなりかけたな
ほんとよかったな
生きぞこないか
死にぞこないか
わかりゃしねえけどな






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不発

書いては消して
書いては消す
消された言葉は中空にある
遺らない
届かない
消された言葉は中空にあり

無残にこぼれた精子のように
着床することなくどこかへと消え
それは命の不発と見え
遺らず
届かず
おそらくどこかにあるものと思え
思いはしながらも探す気にはなれず
また書いては消し
書いては消している

こころによぎるすべてのことを
言葉にできるわけなどないのだ
書いては消して
そのたびに
自分をすこしずつ薄めていっているとしても
こころによぎるすべてのことを
言葉にできるわけなどないのだ

書かずに消す

遺らず
届かず
生まれもせず

そういう言葉が中空にまだあり
ぢっとわたしを睨んでおり
それがみずからの首を絞めるとしても
堕胎の道しか選べぬ言葉が
ある




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宣言

わたしは文飾屋ではありません。
修辞をきわめ、
美しい文言を縦横にふりまわし、
人々を感心させるための
ペンではありません。
わたしのペンはわたしの肉であり、
わたしのインクはわたしの血そのものなのです。




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死んでみせる

両手でにぎりしめた
つよくつよくにぎりしめた
包丁の柄につめのあとがくつきりうかぶくらいに
にぎりしめて

みずからののどを刺し貫く
その刹那を思い
うすらわらい
ふきだす血液をおもいえがいてうすらわらい

ひとりわらい
ひとりあそび
ひとりでおえかき
ひとりでわらう

肺に血がたまってくるしいだらうか
のどは裂けて痛いだらうか
頭はくらくら、気分は最悪だらうか
それはこのさき生きていくよりもつらいだらうか

生きるも死ぬも
引き算ではない
よりつらいから死ぬのではない
よりたのしいから生きるのではない

生きるも死ぬも
引き算ではない
それはカミサマのいいかげんな暗算
勝手きままなカミサマに中指たてることしかできない?

生きてやるんだつて
死ぬまで生きてやるんだつて
ぼくが生きていくことを
生まれてそうそう絶望させた
カミサマに
ぼくができる復讐はそれしかないんだつて

見てろよ
生き抜いてやる
見てろよ
立派に死んでみせる






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詩をかく影

そわそわそわそわ
春の風がふけば
はなびらでなくとも
散りまどう

さざなみたつ
はかない春
あまたにたつ
ことばを編む

ことばのつらなり
こころをかたどる
そわそわ
ふわふわ
ゆきまどう

とうめいの足
かぜにながされ
ただ詩をかく
この世のおばけ




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互いに

植物がそだち
花をつけ
実をおとすのを見て
太陽の恵みだという

でも逆を云えば
可憐に咲いてる小さな花の
おかげで太陽があるのだとも
云えはしないか

花が咲かなきゃ
太陽も太陽ではいられまい




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かくれんぼ

「もういいかい」

まあだだよ

「もういいかい」

まあだだよ

まあだだよ
まあだだよ

だれもいなくなってかくれんぼ
まだつづいているのかくれんぼ

まあだだよ
まあだだよ

鬼さんこちら
見つけてくれなければ帰れない
見つけてくれなければかくれんぼ
ひとりじゃ終われないかくれんぼ

あすこのビルとビルの隙間に
あすこの歓楽街の春売る店に
あすこの工事現場の骨組みに
ひうひう風が吹いてはぬける

あすこにも、ほら、あすこにも
ひとりでつづくかくれんぼ
見つけられるのを待っている

もう一度
もういいかい
といってくれたら
今度はちゃんと
もういいよって言うからさ







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言葉

書かなければいけない言葉などない。
書かれなければいけない言葉もない。

ただ、書かなくてはいられない魂だけが、在る。
そこに在る。
ぢっとしている。




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伝書鳩さんが云いました。

人は
未来にばかり夢を見ているわけではありません。
過去を思ってみてください。
ほら、ね。
みんな、夢のようではないですか。
輪郭はもやもやとし
背景はにじんだ水彩画
あの人の声も、天使の声も
同じにように聴こえる。
過去も未来も、夢でできているのですわ。
全部、夢なのだわ。



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琥珀

ちんけな虫けらのやうなあなたです。

それが夏にはよく働き
秋にはすこしは肥え
冬にはおとなしく読書などをし
春にはきまつて発狂してゐる

ちんけな虫けらのやうなあなたです。

どうです
詩人になれそうですか
うるしにかぶれたときのやうに
その手は掻痒にふるえていませんか

詩にかぶれてはいませんか
詩に何かを求めていませんか
書くことを創ることだと思つてやいませんか

ちんけな虫けらのやうなあなたです。

琥珀のなか
あなたの詩は
一文字として遺らないでせう。
ただ、ちんけな虫けらの遺骸がそこにあるだけでせう。




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翡翠

草むらに落とした翡翠を探しにゆかう。
見つかりつこないと思うけれど
見つかると信じて探しにゆかう。


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2016328

どんどん苦しくなる。
どんどん苦しくなる。

右の耳に右の時計の秒針の音。
左の耳に左の時計の秒針の音。

頭をひらいて、脳みそを洗って干してしまいたいのに
頭蓋骨の鍵をどこにしまったか、おぼえていない。

時間はすすむ。
朝が近づく。

ここに一人、ぼくがいる。
宇宙にむけて、言葉を吐く。

目の穴の内側から誰かが見ている。
そこに誰かが棲んでいる。
それをぼくだと思っていたけど
もしかしたらちがうのかもしれない。

ああ、夜がすべりおちていく。
月が嗤っている。

血は封印されている。
叫喚は閉ぢこめられている。

その気取った横っ面、張り倒してやりたい。
壁に向かってぶん投げてやる。
血が出たって、あざがにじんだって、やめてやらない。
耳からこぼれた、一億リットルの感嘆符。

爆ぜてなくなれ。




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鏡あそび

四つ。
五つ。
六つ。

二枚の鏡、その真ん中に私
私の顔
近づけるほどに顔はふえ
私の背後の空間ほどに
鏡のなかの空間がひろがっていく。
四つ。
五つ。
六つ。
六つの私の顔が、私を見ている。
あるいは私の顔を見ている私を見ている。
そっぽを向いている顔をみつけると、
どきり、とする。
お前はいつのまにこんなに近くに、
私のほほに、お前のほほが触れてるじゃないか。
七つ。
八つ。
九つ。
・・・
ああ
なんてことだ
それぞれの
それぞれの顔の二つの目にも
私の顔が映っている

あ、めまい

のけぞり
見上げる風呂場の天井
そこに湯気
もわり もくり
安全剃刀
十八の目の玉のなかにうごめいていた私どもの顔
その幻影が
湯気の中でたわむれている
石鹸のあわ
ぬれた腕
精神安定剤
・・・
もう一度
鏡に目をむける
一枚の鏡

一枚の鏡に一枚の顔
私の顔
鏡を伏せる
とたんに、ほら、もうわすれている
・・・
安全剃刀に
石鹸のあわ
遊牧民の夢
湯気、湯気、湯気
じゅう

私の顔はすぐこぼれてしまう





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月に

月をしりませんか
ぼくの月を
月を見ませんでしたか
ぼくのまあるい
まあるい月を

あれに映っていたのは
ぼくの顔です
ぼくはぼくの顔を
なくしちまった
忘れちまったんです

月をしりませんか
ぼくの顔をうつした
あの
まあるい
まあるい

月を





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二月ノ鬱

(今日)

木々に新芽が
花に蕾が
つくこのころに
焦燥に駆られるのは
いつものこと
死にたくなるのも
いつものこと


(昨日)

鬱がくれば亀になる
布団の中に隠れてしまい
頭と手足をすこしだけ出す
甲羅のない亀よわい亀
甲羅がなくてはあるけない


ああ、それとも
はつきり白状しやうか?
布団の中にしか居場所がないと
パーカーのフードを目深に
毛布で全身おおいかくして
のそのそ 這うやうに
カタツムリのやうに


(一昨日)

森田童子
ぼくのかわりに泣いてくれる
ぼくのかわりに死んでくれる
友川かずき
ぼくの怒りを叫んでくれる
ぼくの悲しみを見つけてくれる


破裂する
そこ 限界まで
なんとか生きている
と 思っているのに
まだ破裂しないし
まだ悩みはふえる
ぼくはもっと強く
あるいはもっと弱く
生まれたかった


あの頃の無垢を連れて
慟哭の汽車は走り去る
この広い
時間とよばれる平原を
追いつけやしないのだ
無垢は連れ去られていってしまった



(もっと前)

覆面をかぶった子供たちばかりが乗る
夜行列車
マイナス1℃の闇をつんざく汽笛と
子供たちの奇声

そうして鬱が来る
夢をみたんだ







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夏まで

夏までなんとか生き延びやう。

これがいまの
冬の
春の
目標

夏まででいい
なんとか生き延びやう。



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言帝

君はいつでもほっぺたのなかに
苦虫を噛んでいる
ぼくは言う
嘆きなさい
自分の手の届く範囲のものだけ
憤りなさい
自分の手の届く範囲のものだけ
望みなさい
自分の手の届く範囲のものだけ
あとはあきらめなさい





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時間

自己弁護ではない
欺瞞による正当化でもない
そんなものは
必要なかったのかもしれない

ああ、時間だ

ただ時間だけが
それをつつんで赦してくれた
わたしの選択してきた
これまでの人生を
負いきれぬ、その責任を
時間だけが軽くしてくれた

いざなわれるままに
時間についていかう
人生の終わりという
人類未踏の地まで





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自分だらけ

60億からなる
「自分」のゲシュタルト

かれも自分
かのじょも自分

隠されても自分
殺されても殺すのも自分

今日すれちがった人のすべてが
各々に
自分

で、あろう
という仮説にたどりついたとき
少年だったぼくは慄然とした

世界はひとつではないと知った






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超技巧派

純粋ともいえ
単純ともいえ
どうだっていいが
混じりけなしの感性というものがあるとして
その
感性のみで書かれた詩が
技巧を超える瞬間を
ぼくはずっと夢に見ているのだ

そしてそれをなんとなく
待つのではなく
今もむかって歩いているのだ





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贅沢は言わない

贅沢は言わない
もしも
詩を書くことができなくなるなら
そのときは
妻にそっくりな
珠のような娘か息子を
ひとり
産んでもらって
この手に抱いたら
今生に
未練は
なくなるだらう




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詩人

弱者を守るのは
警察の仕事ぢゃない

そう
わたしにはっきり言った警察官がいる
師走の国道357
白バイにまたがった小太りの正義が
見えざる六法をふりまわして
なんども言った
「法律は法律です」
なんどもそれを言った
まるで死におびえ
念仏をくりかえす半死者のように

警察官は弱者を守るのぢゃない
法律を守るのだ
そして自分の家族の食べるもの着るものを
守っているのだ

帰り道
わたしは何度もつぶやいた
弱者を守るのは
警察ぢゃない
警察ぢゃない
弱者を守るのは
警察ぢゃない
弱者を守るのは
われわれ詩人だ
詩人だ





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爆弾

小型の爆弾を
いつも胸に
ひとつ抱えている

ひとり部屋におとなしくしているときも
友とかたらいわらっているときも
妻とわいわいふざけているときも
仕事をしていても
街をあるいていても
いつも胸に
爆弾がある

それが破裂すれば

肉も骨も
別段、どうにもならないが
その奥にある
心と呼ばれる
抽象的な
おそらく内臓の類いのようなそれを
一瞬で
木端微塵にくだいてしまう

その爆弾を
かかえてうつしよを歩いていくところに
ぼくの天命が存在する




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今日はあんまり寒いからと
瓦斯の節約のために普段はお湯をはらない湯船に
なみなみの湯をそそぎこんで
とぷりとつかる

すると
湯にほだされてやわらかくなってゆく手足といっしょに
こころまでがとろりとこぼれ出て
ああ、生きているということは
これほど素晴らしいことであったのか
と、にこやかにため息をつく
湯気たつその眼前の湯をすくい
顔にぱしゃりとかける

それから
そのまま
両手で顔を覆うている
おさないころ
祖父の持っていたひょっとこの面をかぶったときに
面の暗闇から垣間見たひかりの世界を
湯船のなかで再現させている

そうして
そのまま
やがてくる死への恐怖とむかいあう
生死はつねに表裏
生の歓びのなかには死への恐怖がつねにあり
その恐怖の中にこそ歓びが咲く

掌でつくったお面をといて
ぱちゃぱちゃと湯面をひっぱたいて
言う

「ふふん、それだけのことさ」





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幸い

うまれたのが不幸のはじまりだ

人生を呪った若い日

だとしたら
妻と出会えたことが不幸中の幸い
誰に迷惑もかけずに詩を書いていることが
二つ目の幸い
それだけで生きている、今




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社会科

歴史の勉強が
すきでした
おさないころから

でも
うすうす気づいていました

たかだか数千年の
にんげんの歴史は
おおきな螺旋階段をぐるぐる
ぐるぐると
ぐるぐる、ぐるぐると
血しぶきをあげながら上へ
上へと殺到する
狂気の
共喰いの
くりかえしでしかないこと

それに確信をもった日
わたしは歴史の勉強をやめにしました







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記録

ぼくは記憶力がよわい
だから記録している
毎日、日記に
ときおり、ブログに
磨いて、詩に

自分の足跡をたどれるように

そうして
ふと足跡をたどってみる
誕生日や、正月に
そうして
ひとり、絶句してゐる
こんなにも傷だらけになりながら
よく生きてきたものだ
よくぞ今、笑っていられるものだ
そんな自分を
いとしく、かなしく
抱きしめてやりたくもなる





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過激派

妻はぼくの聖地
汚い土足で踏み荒らすなら
その頭かちわるぞ
ぼくは過激派?



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のろし

人が
深い悲しみにからめとられたとき
のろしのあがるように
ひとすじの
雲のようなものがたちあがり
空まで届けばいいのに

そして
それは
遠くにゐる人にもみえるのだ
そうなれば
世の中のそこかしこで悲しみに
身もだえする人たちがゐるのを知り
ある人には
勇気になりはしないだらうか
優しさになりはしないだらうか
世界が
いまよりもっと
優しくなるのではなからうか




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嗤っている
なにがそうまで可笑しいのか
まるで童(わらべ)のように
邪気なく
せらせら嗤っている
師走の
さすように吹き抜ける寒風の
まにまに
からから嗤っている
いやはや
死んでみればわかるものを
なぜ生きてるうちに悩むのだらう
そういっては
かたかた嗤っている

正午の
ぶしつけな太陽のひかりのなかに
打ち棄てられ
むきだしに晒された
骨が嗤っている






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残影

夏のあとかた残さぬ
この
白いうで
さむさにごわごわ
かたいうで
林のかげには
おき捨てられた
虫とりあみ
こわれたスコップ
こどものスコップ
夏はそこに埋っているか
アスファルトに
小石のチョークで
かいた地図
こどもの
こころの
なかの恐怖が
にじみだし
首をもたげる






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ビート

耳をこころにむければ
聴こえてくるこのビート
死のきわにあえぐ時代の息づかい
はたまた
いままさに生まれんとする
新たな時代の胎動か
期待はずれの人類たちが
今日も地面を踏み鳴らし
時代のリズムを奏でている
そこにわたしのステージがある。





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色のなくなる日

珊瑚の死に絶えるほどに
海が海でなくなれば
水色という色はなくなっちゃう

空気がよごれ
空が宇宙をうつさなくなれば
空色という色はなくなっちゃう

世界から水色がなくなっちゃう
水道水の色にかわっちゃう

死んだらひとしく閉じるまぶた
生きてる間に なにを見るか
死んだらまっくろ
だから今日みあげるこの青空
すみきった
とびきりのこの水色





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逃げきれぬ

このごろは
詩もよまず
書きもせず
とくに思いもせず
暮らしていた
それでも
詩は
ぼくの人生に
ぴったりとよりそい
まとわりつき
ふりはらうことができない
だいぶ
好かれているのだな と
こそばゆい心持のなかでおもう

詩はぼくの影なんだろう
どこへ行ってもついてくる
では
光はなんだろうか

鬱の
絶望的なくらやみのなかで
わずかな光がうみだす
もろい影の頼りなさや
はかなさや
うつくしさ
その光の正体とは
いったいなんであろうか


そんなこともわからぬまま
今日もぼくは
ぼくの影法師をめでる





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百年後

1945
何があったか
誰もがもう忘れている


百年後
とはいわず 一年後
安保デモがあったことなど
すっかり忘れ去られている
百年後
当事者たちは
ひとしく
みな永眠し
かの論争の名残をのこす
なにものもない
百年後
人間が汚辱にまみれながら
なお生き残っているならば
また新たな闘いにあけくれながら
一方でまた
そのふたつの掌をあわせて祈り
そのこぶしをふりあげて叫び
平和を希求しているのだらう
百年後
人間が
その闘いの記憶が
生き残っているならば






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自己紹介

偕誠

Author:偕誠
a.k.a.破裂
1983年生まれ。
東京都在住。
双極性障害と苦闘しながら
詩作に励んでおります。


※拙文ではありますが著作権は当方にあります。
無断転載等はご遠慮くださいませ。

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