091234567891011121314151617181920212223242526272829303111

目次

○自己紹介

こちらから

☆詩・散文・心象スケッチ

「スケッチ」

「私の断片」


★最近のもの

2016年の「第十二回 文芸思潮現代詩賞」に以下の三篇が「入選」しました。
風のなかを歩く
鬼火



コメント・批評、大歓迎です。


「経済社会が値を付ける、花屋の花ばかりを志したくない。
野の花もまた精一杯咲くことの出来る世の中でありたい」
(石垣りん)


にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村
スポンサーサイト

記念日

青空を
切り裂くやうな
音がして
胸騒ぎを誘う
轟音が聞こえ
空を見上げる
きつと飛行機でせう
ずいぶん低くを
飛んでいますね
人々は
小さな胸騒ぎを
呑み込んで
何事もなかつたやうに
日常に
すぐさま戻つてゆく
それが
義務でもあるかのやうに
轟音は
近づいてくる
人々は
そのとき
眠りに就かうとしていたり
食事を摂らうとしていたり
妻子と遊んでいたり
なにかの努力をしていたり
世界平和を祈つていたり
その人々の
からだは
数秒後
大小無数に千切れて散らばり
焼け焦げて
灰になる
轟音の正体が
なんであるかも知らぬまま
それは
誰かが切つた
トランプのカードだ
死神の顔を載せた
冷たい愛国心が
人々の頭上に届く
日常のままに
影になる
うち崩れた壁に
コンクリートの瓦礫の上に
人々は影になる
一瞬のことだ
権力者の
政治的射精のために
武器商人の利益のために
人々は影になる
塵になる
歴史を思へば
螺旋状に脈打つてきた
幾多の殺戮が
きらめいている
誰かが切つた
トランプのカードが
誰かの日常の上に落ちる
光が破裂する
おおきなきのこが
幾千万のいのちを吸う
もうわかつていることだらうに
人はそのボタンを押す
必ず押す
その日は記念日になるだらう
長崎や広島のやうに
語り継ぐものが
残つていたなら

詩人にそのとき
できることはなにもない
きつと皆と一緒に
冷たい影になるのだらう





にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

花園

ぼくのもとに
誰もいなくなったとしても
世界中に
ぼくだけがとり残されても
なお
詩を書くだろう
それがぼくという詩人であり
それがぼくの思想のすべてだ

詩を書く者は
ひとよりなにかが秀でている
そう思っている人は少なくない
みずから詩を書きながら
そう思っている人も少なくない
ぼくの考えはちがう
詩を書く者は
詩を書くことができるものではなく
詩を書かずにはいられないものであって
それははっきり云ってしまえば片輪なのだ

人が平気でいられるのに
煙草を欲する
酒を欲する
薬を欲する
それらは依存症などをふくめた病だ
人が平気でいられるのに
詩を書くことを欲する
頭をかきむしらんばかりの
心の内の擾乱にせかされて
書かずにはいられない
それも病だ
こんな明白なことはないだらう?

たった一言でいい
その言葉をひねりだすために生きてる
詩の本質はそれを発することであり
そもそも読まれることすら
端から当てにしていないものかもしれない
蓋し詩人という生きものは
その言葉を発するときに
誰に読まれるかなど考えていない
どうすれば売れるかとも考えない
それらはみな文飾屋のやることだ
読まれるための文章というものを否定するわけではない
ただし、それは詩ではありえない

ぼくは詩人だ
書こうと思って書いているのではない
書かなければいられないから書いている
評価も流行もくそくらえだ
ただ己のことばかりをおもうがゆえに
詩を書き続けるのみの道だ
わびしく
不毛で
無意味な道だ
それでも
夢か幻のような一生において
ぼくはそれのみをなすべく
生まれてきたのだから

日々くるしみの園は
そのふところを深めるばかり
生きたら生きただけ
恥やくるしみを上塗りしてゆく
薔薇のつぼみがたえずふくらみ
ほぐれては咲いていくように
日々は毎日のくるしみを咲かせる
その花のひとつひとつを
筆先でちょんと摘みとってゆくのが
ぼくの仕事だ
花はときに飾られ
ときに撃ち捨てられ
ときにむしゃむしゃ食べられる
くるしみの園
ぼくはそこの庭師

これがぼくの詩人としての
思想のすべてです




にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

旅人

なぜ旅にでたのか
居場所がなかったからだ

なぜ旅をつづけるのか
居場所が見つからないからだ

旅はいつ終わるのか
そんなことはわからない

旅はいつはじまったのか
そんなことは考えない

どこへ帰るのか
帰る場所などない
ふるさとなどない
だから旅人なのだ

旅をするから旅人なのではない
帰る場所がどこにもないだけだ




にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

雨夜

スターアニスの強烈な香りが
まだ鼻のちかくに漂っている
外は、いま、雨
一杯のパスティスに
病み上がりの頭を酔わせながら
わたしは人生ではじめての蔵書票を
ある一冊の本に貼った

外は雨

わたしが生まれたとき
病院の外は嵐だったと母から聞かされた
真夜中一時過ぎ
雨風の音の谷間に
産声をあげたのだ
「おまえはあらしの夜に産まれたのよ」
わたしはそのことを強く記憶している
いったいなぜか
おそらくそれはわたしの気に入ったのだ
晴天の昼に生まれてくるわたしではない
嵐の真夜中が
なぜかしら自分にふさわしく思えたのだ

わたしが生まれたとき
戸外にいる人たちはみなきっと
うつむいて憂鬱な顔をして歩いただろう
嵐だ
おまけに真夜中だ
もしかすると
外は人々より
魑魅魍魎のほうが
多く出歩いていたかもしれない
だれもそれには気づかない
だってみんな傘をさして
下を向いて歩いているのだから

パスティスの酔いと
睡眠薬の酔いが混ざりはじめている
意識は、白濁してゆく
水を注いだアブサンのように

外は雨

父は雨音を聴くのが好きだった
雨が降ると
家中のあかりをすべて消し
窓を開けはなち
その雨の吹きこんでくる窓辺に横たわり
死んだように横たわり
全身で雨音を聴いていた
わたしも一緒になってその雨音を聴いた
暗い家から見える外の雨は
街灯や他家のあかりを反射させ
みだらなほどに輝いていた
父はいつもそういうとき
いつもよりずっと穏やかになっていた

雨、外は、雨

わたしは今夜も胸のなかをのぞいてみる
自殺への衝動は、そこにいる
そこにいて、ふるえている
ぽ、ぽ、ぽ、
と、雨の音にうたれるように
胸の中でちいさくうごいている

外は雨

蛙がよろこんで走り回っているだろう
今日の昼にわたしが植えた花も

わたしが死ぬときも
どうか今日のように
雨が降ってほしい
なぜという
特別な理由はない
なぜかしら、それがわたしにふさわしく思えるのだ

外は雨

指の先まで
血管のなかをすさまじい勢いで
水が流れていくのがわかる
心臓が一定のリズムで
水を送りだしているのがわかる

外は雨
ただの、どこにでもある一夜
けれどこれは、わたしだけの一夜




にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

美徳

昨夜からの熱をぶらさげて
草を刈る
一日に
一万二千円が
ほしいので
草を刈る
熊手をひっぱる

夏の最後っ屁のような今日の昼
やつらは半袖でやっているというのに
わたしはといえば
阿呆みたいに
長袖を二枚も着こんでまだ
27℃の晴天にこごえている

「なにがあっても仕事を休まない」
とか
「病なんてものは働いてふきとばす」
だの
彼ら植木屋の美徳はすばらしい
簡潔にして精悍だ
おお、すばらしい
けれど
それはわたしの美徳ではない
ただ
一日に
一万二千円がほしいだけ

めまいがしようと
骨が凍ろうと
草を刈る
熊手をひっぱる
一万二千円がほしいだけです



にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

自画像

眉のうえに角がみえる
眉骨というふくらみが
ひとよりすこし
発達している
わたしの横顔は
ゴリラのそれに似ている
その横顔を見て
まるで角が生えてくるようだと
無邪気に怖れる妻にわたしは
「それはコンプレックスなのだから
あんまり触れてくれるなよ」
といい、苦笑だけしてみせる

ところが
それは別段、コンプレックスでもなんでもないのだ
それは顔に歴史が映っているだけなのだ
わたしの眉の上には事実、角が生えていたのだ
肉親を呪い
社会を呪い
運命を呪い
周囲の物事、人物、現象のことごとくを
疎ましくおもい
常に反撃にでられる体勢で
堅固にこぶしをにぎりこんで
人を憎み
己を憎んでいた、わたしの歴史

母が
「この子はいつもなにかを睨んでいる
眠っているときでさえ
眉間にしわが寄っている」
と嘆いていたことも過去にあったが
それもすこし違うのだ
眉間にしわが寄っていたのではなく
それは刻まれたもので
さらに言えば、それはしわではなく怒りだ
その刻まれた怒りが
ゆるやかに歳月をたくわえて
眉骨をすこしづつ
すこしづつ隆起させていっただけのことなのだ

そういったわけで
わたしの顔には
わたしの歴史が刻み込まれている
鏡をみるたび、思い出すように
決して忘れることのないように




にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

詩人

それは莫迦げた考えだというだろう
現実的ではないと
嗤うだろう
後ろ指をさすことだろう
腹をかかえて
気の毒がる人もいるだろう
更生させようとするかもしれない
どうも、ご親切に!

でもぼくは決めたのだから
この暗くて
せまいのかどうかすらもわからないほど暗くて
寒いのか暑いのかもわからないほど暗くて
険しいかどうかもわからないほど暗い
この道をゆくだろう
己の言葉をたいまつに燃やして
一本のペンに命を吸いこませて
綴るだろう

君に語るだろう
君のかわりに語るだろう
そして死ぬまでそれをやめないだろう
駄作でいい
愚かでもいい
恥じるものはない
これはぼくとぼくの勝負なのだ
ぼくはもう宣戦布告をしたのだから
この、往く人の少ない道を選んだのだから

これは誓いではありません
自ら詩人と名乗るからには
なにがあっても、死んでも、
ペンを折ってはいけない
そういったあたりまえの
つまるところ覚悟の話なのです





にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村

自己紹介

偕誠

Author:偕誠
a.k.a.破裂
1983年生まれ。
東京都在住。
双極性障害と苦闘しながら
詩作に励んでおります。


※拙文ではありますが著作権は当方にあります。
無断転載等はご遠慮くださいませ。

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

リンク

Welcome!

OfficeK

応援おねがいします

ブロとも一覧

検索フォーム

RSSリンクの表示

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR