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目次

○自己紹介

こちらから

☆詩・散文・心象スケッチ

「スケッチ」

「私の断片」


★最近のもの

2016年の「第十二回 文芸思潮現代詩賞」に以下の三篇が「入選」しました。
風のなかを歩く
鬼火



コメント・批評、大歓迎です。


「経済社会が値を付ける、花屋の花ばかりを志したくない。
野の花もまた精一杯咲くことの出来る世の中でありたい」
(石垣りん)


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不如帰

「自分は詩人だ、などとよく言えるな」
君はいう
「恥ずかしくはないのか」

わたしは答えない
わたしの答えるべき問いではない

「小説家という連中は、小説で金を稼いで食っている
それにくらべて、お前はどうだ
本の一冊でも出したのか
お前の詩は一円にでもなったのか」

わたしはやはり、答えない
答える義務もないし
そうして得るなにものもない

詩は
商品ではない
わたしのたましいだ
貨幣と交換する価値はない
一枚の貨幣は一編の詩と
等価ではないのだから、当然だらう?

一万円札を
高く高く積み上げれば
わたしの詩を買うことができるか?
わたしのこころから生まれる詩を
金で買えると本当に思うのか?
冗談だろ

鳥の歌声を
金で買うことができるか?
代金をはらえば
その鳥を飼うことはできるだらう
けれどその歌声は
君のものではない
その鳥のものだらう?

鳥は君のためには歌わない
君がそう感じるのは勝手だが
鳥は君の満足のために歌っているのではない
鳥は鳥として
生まれたから
歌っているのだ
与えられた声をつかって
一個の生命そのものの声で
歌っているのだ

その歌は
商品ではない

わたしはこの経済社会のなかで
廉価で売られる
替えのきく
使い捨ての
ありふれた
歯車の一種
わたしにも
わたしの生まれたことにも
たいした価値はない
意味もない

日々
自分を切り売りして
糧を得る
それは
詩を書くためなのだ
君にそう答えても、理解できまい
わたしは
鳴きつづける
つつじのような
真っ赤な鮮血を吐いても
歌いつづける
そのことだけに
わたしはわたしの
価値を信じる

詩人とは職業ではない
生きかたであり
美意識だ
わたしにとっての唯一の美学だ





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清廉

家電がひとつ壊れました
購うために何日はたらけばいいでせう
雨の一日
体のあちこちから湯気をたてて
えっさと土を耕して
ほいさと根っこをほじくって
家電がひとつ壊れたので
その分よけいにはたらくのです

つめたい空気
無慈悲な風
頬がすこしだけ痺れて
冬を思い出します
つま先はゴムの足袋の中で
つららのようです
腕は湯気をもうもうたてて
機関車のようにはたらきます

雨の冷たさは信頼できます
血液が熱くはたらきます
風をよけて
ジッポで煙草に火を点けます
ジッポの火を愛してます
煙草のけむりのなかに
こっそりため息が隠れてます
金属の冷たい音がして
ふたが閉まります

はたらくわたし
もの思わぬ葦
蟻のように無心です
蜂のように清廉です




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記念日

青空を
切り裂くやうな
音がして
胸騒ぎを誘う
轟音が聞こえ
空を見上げる
きつと飛行機でせう
ずいぶん低くを
飛んでいますね
人々は
小さな胸騒ぎを
呑み込んで
何事もなかつたやうに
日常に
すぐさま戻つてゆく
それが
義務でもあるかのやうに
轟音は
近づいてくる
人々は
そのとき
眠りに就かうとしていたり
食事を摂らうとしていたり
妻子と遊んでいたり
なにかの努力をしていたり
世界平和を祈つていたり
その人々の
からだは
数秒後
大小無数に千切れて散らばり
焼け焦げて
灰になる
轟音の正体が
なんであるかも知らぬまま
それは
誰かが切つた
トランプのカードだ
死神の顔を載せた
冷たい愛国心が
人々の頭上に届く
日常のままに
影になる
うち崩れた壁に
コンクリートの瓦礫の上に
人々は影になる
一瞬のことだ
権力者の
政治的射精のために
武器商人の利益のために
人々は影になる
塵になる
歴史を思へば
螺旋状に脈打つてきた
幾多の殺戮が
きらめいている
誰かが切つた
トランプのカードが
誰かの日常の上に落ちる
光が破裂する
おおきなきのこが
幾千万のいのちを吸う
もうわかつていることだらうに
人はそのボタンを押す
必ず押す
その日は記念日になるだらう
長崎や広島のやうに
語り継ぐものが
残つていたなら

詩人にそのとき
できることはなにもない
きつと皆と一緒に
冷たい影になるのだらう





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花園

ぼくのもとに
誰もいなくなったとしても
世界中に
ぼくだけがとり残されても
なお
詩を書くだろう
それがぼくという詩人であり
それがぼくの思想のすべてだ

詩を書く者は
ひとよりなにかが秀でている
そう思っている人は少なくない
みずから詩を書きながら
そう思っている人も少なくない
ぼくの考えはちがう
詩を書く者は
詩を書くことができるものではなく
詩を書かずにはいられないものであって
それははっきり云ってしまえば片輪なのだ

人が平気でいられるのに
煙草を欲する
酒を欲する
薬を欲する
それらは依存症などをふくめた病だ
人が平気でいられるのに
詩を書くことを欲する
頭をかきむしらんばかりの
心の内の擾乱にせかされて
書かずにはいられない
それも病だ
こんな明白なことはないだらう?

たった一言でいい
その言葉をひねりだすために生きてる
詩の本質はそれを発することであり
そもそも読まれることすら
端から当てにしていないものかもしれない
蓋し詩人という生きものは
その言葉を発するときに
誰に読まれるかなど考えていない
どうすれば売れるかとも考えない
それらはみな文飾屋のやることだ
読まれるための文章というものを否定するわけではない
ただし、それは詩ではありえない

ぼくは詩人だ
書こうと思って書いているのではない
書かなければいられないから書いている
評価も流行もくそくらえだ
ただ己のことばかりをおもうがゆえに
詩を書き続けるのみの道だ
わびしく
不毛で
無意味な道だ
それでも
夢か幻のような一生において
ぼくはそれのみをなすべく
生まれてきたのだから

日々くるしみの園は
そのふところを深めるばかり
生きたら生きただけ
恥やくるしみを上塗りしてゆく
薔薇のつぼみがたえずふくらみ
ほぐれては咲いていくように
日々は毎日のくるしみを咲かせる
その花のひとつひとつを
筆先でちょんと摘みとってゆくのが
ぼくの仕事だ
花はときに飾られ
ときに撃ち捨てられ
ときにむしゃむしゃ食べられる
くるしみの園
ぼくはそこの庭師

これがぼくの詩人としての
思想のすべてです




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旅人

なぜ旅にでたのか
居場所がなかったからだ

なぜ旅をつづけるのか
居場所が見つからないからだ

旅はいつ終わるのか
そんなことはわからない

旅はいつはじまったのか
そんなことは考えない

どこへ帰るのか
帰る場所などない
ふるさとなどない
だから旅人なのだ

旅をするから旅人なのではない
帰る場所がどこにもないだけだ




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雨夜

スターアニスの強烈な香りが
まだ鼻のちかくに漂っている
外は、いま、雨
一杯のパスティスに
病み上がりの頭を酔わせながら
わたしは人生ではじめての蔵書票を
ある一冊の本に貼った

外は雨

わたしが生まれたとき
病院の外は嵐だったと母から聞かされた
真夜中一時過ぎ
雨風の音の谷間に
産声をあげたのだ
「おまえはあらしの夜に産まれたのよ」
わたしはそのことを強く記憶している
いったいなぜか
おそらくそれはわたしの気に入ったのだ
晴天の昼に生まれてくるわたしではない
嵐の真夜中が
なぜかしら自分にふさわしく思えたのだ

わたしが生まれたとき
戸外にいる人たちはみなきっと
うつむいて憂鬱な顔をして歩いただろう
嵐だ
おまけに真夜中だ
もしかすると
外は人々より
魑魅魍魎のほうが
多く出歩いていたかもしれない
だれもそれには気づかない
だってみんな傘をさして
下を向いて歩いているのだから

パスティスの酔いと
睡眠薬の酔いが混ざりはじめている
意識は、白濁してゆく
水を注いだアブサンのように

外は雨

父は雨音を聴くのが好きだった
雨が降ると
家中のあかりをすべて消し
窓を開けはなち
その雨の吹きこんでくる窓辺に横たわり
死んだように横たわり
全身で雨音を聴いていた
わたしも一緒になってその雨音を聴いた
暗い家から見える外の雨は
街灯や他家のあかりを反射させ
みだらなほどに輝いていた
父はいつもそういうとき
いつもよりずっと穏やかになっていた

雨、外は、雨

わたしは今夜も胸のなかをのぞいてみる
自殺への衝動は、そこにいる
そこにいて、ふるえている
ぽ、ぽ、ぽ、
と、雨の音にうたれるように
胸の中でちいさくうごいている

外は雨

蛙がよろこんで走り回っているだろう
今日の昼にわたしが植えた花も

わたしが死ぬときも
どうか今日のように
雨が降ってほしい
なぜという
特別な理由はない
なぜかしら、それがわたしにふさわしく思えるのだ

外は雨

指の先まで
血管のなかをすさまじい勢いで
水が流れていくのがわかる
心臓が一定のリズムで
水を送りだしているのがわかる

外は雨
ただの、どこにでもある一夜
けれどこれは、わたしだけの一夜




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美徳

昨夜からの熱をぶらさげて
草を刈る
一日に
一万二千円が
ほしいので
草を刈る
熊手をひっぱる

夏の最後っ屁のような今日の昼
やつらは半袖でやっているというのに
わたしはといえば
阿呆みたいに
長袖を二枚も着こんでまだ
27℃の晴天にこごえている

「なにがあっても仕事を休まない」
とか
「病なんてものは働いてふきとばす」
だの
彼ら植木屋の美徳はすばらしい
簡潔にして精悍だ
おお、すばらしい
けれど
それはわたしの美徳ではない
ただ
一日に
一万二千円がほしいだけ

めまいがしようと
骨が凍ろうと
草を刈る
熊手をひっぱる
一万二千円がほしいだけです



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自己紹介

偕誠

Author:偕誠
a.k.a.破裂
1983年生まれ。
東京都在住。
双極性障害と苦闘しながら
詩作に励んでおります。


※拙文ではありますが著作権は当方にあります。
無断転載等はご遠慮くださいませ。

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